PART V遊びと創造のアート25表現せずにはいられない
私の演奏が誰かの耳に入る。私の踊りが誰かの目に入る。脚本が、演技が、写真が、映像が誰かに経験される。
いろんな形で表現したものが、どこかの誰かに遭遇して、そこでなにかが起きる。泣いたり、笑ったり、夢中になったり、もっと触れたいと感じたり。あるいは退屈したり、よく分からないなあと思ったり。
人の心を動かすこと。それはちょっとした魔法のようなものだ。
時にはそうした表現との出会いが、誰かの一生を変えてしまうことだってある。
「この監督のような映画を撮りたい!」「自分でもこんなフレーズを奏でたい」「あの人のような俳優になりたい」
たぶん人は、誰かの表現にであって、そんなふうに心を動かされたから、自分も表現してみたいと思い始めるのだろう。はじめに憧れありき。
憧れて、試してみる。これだと思う。これじゃないと感じる。できることが分かる。できないことも明らかになる。練習を重ねると、最初できなかったことが少しずつできるようになる。うまくできなかったことに、自分でも気づいて直せるようになる。学べば学ぶほど、トレーニングすればするほど、できることが増える。表現のうえで自由になってゆく。
では、はじめの一歩はどうしたらいいだろう。
いま活躍している先人たちは、どんなふうにしていまのようになったのだろう。巨匠やヴェテランたちは、ちょっとやそっとでは近づけないほど遠くまで進んでいて、その背中は果てしなく大きく見える。
でも、かれらにも、右も左も分からなかった時代があったはず。憧れから最初の一歩をどうやって踏み出したのだろう。どんな試行錯誤や失敗をしたのだろう。
先人のつくった道を見てみよう。後に続こう。そして、まだない道をつくろう。表現をしよう。
165ジャジャジャジャーン
クラシックが下世話に学べる?
深夜音楽室の肖像画からパコッと現れたベートーヴェン。未完の交響曲第10番を完成させるまでは死ねない! 夜な夜な繰り広がるクラシック界の偉人たちによる教養に満ちた下世話な饗宴。クラシックの豆知識も豊富に挟み込みんだ、音楽科卒作家のギャグマンガ。クラシックを笑いながら学ぶ。
166ダンス・ダンス・ダンス
バレエに魅了された男子の宿命
村尾潤平13歳。父の死をきっかけに大好きだったバレエを一度は諦めたが、衝動を抑えきれず再びバレエの道へ。かっこいいって、男らしいって、なんなんだ? 疑問を腹に抱えて、すべてを犠牲にした先に夢は切り拓ける。葛藤と爆発の狭間で、もがく姿に目が離せない。
167振付家は知っている
人の心を躍らせる子ども力
誰もが無視できない、人の心をわしづかみにするすごい仕事をしている人ってどんな人だろう。大ヒットを生み出すクリエイターを観察すると、子どものような自由な発想や欲望を頑固に貫いていることが見えてきた。成功のヒミツは「子ども力」にあり。いまや「ようかい体操第一」の振付家としても有名なラッキー池田が創作の秘密を公開した。
168舞台に立つ方法
俳優になるために必要なこと
俳優に必須の才能は俳優の仕事をするということ。この単純で明確な真実をどれだけの俳優が心得ているだろうか。演技の技術を学んだかではない。真実を感じる感覚があるかどうかが問題だ。自分の意思に正面から向き合えなければ、劇場に立つことなどできない。
169脚本家志望
3年あれば脚本家になれる
ちまたに溢れる脚本のハウツー本にあらず。脚本とは何か、脚本家修行の仕方、コンクールでの受賞対策など、経験に基づく具体的な勉強方法が明らかになる。プロへの道のりは3年間の訓練次第。大人気脚本家が教える、本当に脚本を書けるようになる方法。
170すごい監督たち
非道・邪道こそエネルギー
生まれた時からへそ曲がりで天邪鬼。常に世間にそっぽ向いて歩いてきた。映画の外道、映画の非道を生き抜きたいという気持ちは、園子温の人生そのものだ。映画に文法があるとしたら、そんなものはぶっ壊せ。圧倒的に嫌われまくって生きたエネルギーが今をつくるのだ。
171ドキュメンタリーにハマる
「観察映画」の逆観察記録
テーマも台本もキャストも撮影日程も決めず、カメラも音声も自分ひとりで担当する映画監督がいる。著者の想田和弘だ。監督がカメラを通して見て聞いたことだけが映画の素材になる。「観察映画」と名付けられた、その手法には思いがけないものも映り込む。本書は、そんな想田和弘を逆観察したものだ。映画のような一冊を味わってほしい。