PART I自然と人間のサイエンス06科学者の部屋
科学者といったら、どんなイメージがあるだろう。
白衣を着て顕微鏡を覗いたり、フラスコに入った液体を混ぜたりする人?
コンピュータや巨大な装置を使ってなにかを観察したり実験したりする人?
黒板を数式でいっぱいにして難しい理論を考えている人?
科学者は、宇宙や地球で生じるさまざまな自然現象に興味をもっている。それこそ電子顕微鏡でも見えないような極小の世界から、どれだけ広いかもわからない宇宙全体のような極大の世界まで、自然にかんすることはなんでも科学者の研究対象になる。
科学者は、ふつうなら人があまり気にしてないことも気になる。「宇宙はなにからできている?」「人間の脳ってどんなしくみ?」「生命ってなんだろう?」などなど(この疑問のリストは数百どころか数千、数万もつづく)。
ついつい「それが分かるとなにかいいことあるの?」と尋ねてみたくなる。でも、そうじゃないんだな。もしチャンスがあったら聞いてみよう。「どうして研究してるんですか?」って。
彼らはきっと口を揃えてこう言うはず。「そりゃあきみ、知りたいからだよ! 解き明かしたい謎があるのさ」と。
そう、科学者は、できたらまだ人類のうち、誰も答えを知らない自然の謎を解き明かしたいと願っている。
学校の教科書に出ているのは、すでに答えが分かっていること。もちろんそれも面白いけど、もっと楽しいのは、科学者たちがどうやって謎ととりくんできたか。どうやって作戦を立てたり、たくさんの失敗を積み重ねて試行錯誤してきたかということなのだ。
そんな科学の現場や歴史を覗いてみよう。
37ようこそ、研究所へ
研究所からすべてが始まる
ノーベル賞を(まだ)取ってなくても、すごい研究室がたくさんある。藻からオイルを作る次世代燃料、ネズミが猫を怖がらなくなる仕組み、粘菌の賢さの測り方。最新の成果を語る様子から、研究者自身の人柄が見えてくる。ユーモア、あきらめない強さ。研究所からすべてが始まる。
38ずっと実験していたい
ニュートリノをつかまえろ
クイズです。この世でもっとも小さいものを捕まえるのに必要な道具はなんでしょう? 答えは「加速器」。この世で最も大きく精密な機械だ。現場で動かす研究者が、素粒子の正体から加速器の使い方、宇宙の果てまで、高校生のあらゆる質問に答える。多田将の比喩の的確さはノーベル賞受賞者も太鼓判。ニュートリノはどうやってつかまえられるのか?
39ミクロの世界
顕微鏡で見ればすべてがワンダー!
吸い込まれそうな不気味な唇。小さいつぶつぶの中に球体の鎖。何? 電子顕微鏡で見た豆の気孔(5800倍)にヨーグルトと乳酸菌(45000倍)だ。身近なものに、ちょっと鳥肌が立つほど驚異のデザインが隠れている。植物、菌、鉱物。ホコリやカビた壁紙なんてものも。不思議に人間が小さく思えてくる。
40アインシュタインになりたくて
アインシュタインも失敗していた
ダーウィンは遺伝子の存在を洞察できず、ムリのある理論を展開せざるを得なかった。アインシュタインも量子の世界を予見できず、あり得ないと結論づけていた。科学者も失敗しているのだ。5つの科学者の失敗に焦点を当てて、科学に革新が生まれるプロセスをスケッチする。失敗してこそ、科学なのだ!
41「科学」のはじまり
好奇心が止まらない400万年間
約400万年前、直立二足歩行を始めたアウストラロピテクスは既に好奇心という動物にないものを備えていたらしい。人類は今、宇宙の果てなど観測すらできないものまで説明しようと挑戦を続けている。ホロコーストを生きのびた父を持つ物理学者が、「これから」も視野に入れて綴った科学の大河ドラマ。これで科学の歴史はバッチリ。
42トムキンスの授業
科学がわかる異世界ファンタジー!
ちょっと科学好きの銀行員トムキンスさんは、相対性理論の講演を聞きながらウトウト…。すると世界は一変していた。スピードを上げると見た目が縮んだり、汽車に乗りつづけていると若いままだったり。ここはどこ? 実は光の速さが違うだけの世界なのだ。アインシュタインも読んだ物理学者ガモフの物語。博士の解説付き。これで、相対性理論もわかる。