PART I自然と人間のサイエンス07数に魅せられて
「数学なんてなんの役に立つの?」とは、ときどき耳にする疑問。
ひょっとしたらあなたもそんなふうに思ったことがあるかもしれない。
役に立つかどうかと言われたら、それはもう断然役に立つ。それどころか数学がなかったら、現代社会のいろんなことも成り立たないくらい。
例えば、コンピュータが動くのも、ロケットが宇宙へ飛び立てるのも、高いビルを建てられるのも、国や会社や家庭でのお金の計算も、映画やアニメの映像も、天気予報も、人工知能も、ネットも、みんな数学の力を借りている。
ただし、そう言われてもやっぱり苦手だなあと思う人もいるかもしれない。そんな人にもそうでない人にもちょっとご提案。
少しだけ数学の教科書を脇に置こう。そして、数学者たちがなにをしてきたか、なにをしているかを見てみよう。
かれらは、世界中でまだ誰も解明していない数の性質を探究している。例えば、素数はそのひとつ。素数がどんなものかは分かっているけれど、すべての素数を一網打尽にするようなやり方はいまのところ見つかっていない。
そのつもりで数学の世界や歴史を見てみると、そんな難問がずらりと並んでいる。なかにはフェルマーの最終定理みたいに300年以上もかかって解決された問題もあったりしてびっくりする。
それから、現在私たちが使っている数学のいろんな記号も最初から揃っていたわけじゃない。いまなら数式で書くものも、最初は普通の文章で書いていたと言ったら信じてもらえるかな。
いちいち言葉で書くとたいへんだと思った人たちが「三と二を加え合わせた結果は五に等しい」という代わりに「3+2=5」という書き方を工夫した。
そんなふうにいまの数学がどうしてこうなってきたのか、最初に記号や証明や公式を考えた人はどうしてそんな問題に取り憑かれたのかが分かると、数学もぐっと一段面白くなる。
44数学は役に立つ?
アインシュタインも絶賛の数学物語
1884年生まれの著者は、1930年にこの本を世に出した。数とはいったい何なのか、数の概念はどのように発展してきたのか? 指を使って数える感覚にはじまり、自然数、整数から有理数、無理数、実数、無限や連続といった難問まで。今なお輝く数学読み物の古典。アインシュタインが「数学の進歩を扱った本として、私がこれまでに手に取った本の中で間違いなく一番面白い」と大絶賛だ。
45天才数学者に学ぶ
無限とは何か? それは数なのか?
「無限」が数学の概念として扱われるようになったのは、19世紀後半からだ。数学になる前、無限とは神だった。神の領域を数学の問題とした数学者カントールは、異端視され精神を病みながらも超難問を考え続けた。ミステリアスな無限の性質とそれに挑んだ数学者たちを描く。研究とは命がけで行うことなり。
46数学の物語
謎と天才が出会うから面白い
動物にも数がわかる? 両手の指10本から10進法の考え方が生まれた? 数学は謎ばかり。幾何学を大成したユークリッド。数学の天才アルキメデス。三角形の内角の和が180度であることを独力で発見したパスカル。数学者は発見の天才だ。謎と天才が出会うのが数学の面白さ。絶対に解けない問題なんてない。数学者の不屈の精神に見習いたい。
47世界を変えた数式
最大の難問に挑んだ数学者のドラマ
17世紀のフランスに生きたフェルマーは、役人として働きながら、趣味で数学を研究する。のちにフェルマーの最終定理と呼ばれる謎の命題を遺す。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」という思わせぶりなコメントとともに…。1994年、ワイルズが完全証明を果たすまでのドラマ。まるでサスペンス映画を見ているほどに手に汗握る。数学はこんなにもアツかった!