世界を変えるU33

保育で世界を変える

MixiCheck

子どもの好奇心が、
世界を平和にする。

川辺 洋平(かわべ ようへい)さん
NPO法人 アーダコーダ 代表理事

川辺 洋平

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Interview Q1.どんな問題に取り組んでいますか?

「自分と違う価値観に、興味を持とう。」

—アーダコーダは、どんな取り組みをしているのでしょうか?

幼稚園から小学生の子どもたちが日常の疑問について、自分の意見を持ち、他人の意見を聞き、考え抜くことで、自由な発想で生きられる社会に気付くことを目指したプログラムです。

子ども哲学と言われていて、元々は1970年代にニューヨークで生まれた、子ども向けの哲学的対話です。
ヨーロッパからアジアへと伝わり、日本でも2010年代に入って少しずつ広まっています。

哲学的対話ですから、相手を負かすことが目的ではありません。
「人生って、何?」「夢って、必要なの?」「お金は、必要か?」
そんな正解のない疑問や問いをテーマに、みんなで対話をしていくことで、「自分の価値観」に気づき、自分らしい幸せな人生を歩むきっかけにしてほしいと思っています。

—子どもを対象としていることには、理由があるのでしょうか?

今の世の中は、ものすごい量の情報があふれていて、価値観が多様化したと言われています。

SNSも発達しているから、自分と近い価値観の仲間を見つけやすくなりました。
自分と似た人と一緒にいるのは、楽ですし、安心です。
でも、摩擦を嫌がるようになったと感じています。

多くの人が、自分と違う考えを持った人への好奇心を失っているとしたら。
それって、すごく怖いことだと思うんです。

偏差値で区切られて、やりたいことで区切られて、収入で区切られて、住んでるところで区切られて。
好奇心の持ちようがないと言ってもいいかもしれません。

自分や仲間がよければ、あとは興味がない。
それでは社会に対して「自分は関係ない」と当事者意識も持てず、自己中心的な人ばかりの世の中になってしまいますよね。

子どもは、好奇心の固まりです。
名前なんて知らなくても、すぐに友だちになってしまう。
タブーなんてないから、気になれば「なんで?」と問いかけてくる。

子ども哲学を通して、好奇心を失わない大人がたくさん増えてほしいと思っています。

相手に興味を持ち、知ろうとすること。
それは、いろいろな問題解決のど真ん中にあると思っています。
だって、よく知っている相手のことって、きっと誰もいじめないと思うんですよね。

「子ども哲学」では、子どもたちが話したいテーマを持ち寄ります。

Interview Q2.今の取り組みをやろうと思ったきっかけは?

「大人になるにつれ、好奇心が失われていった。」

—大学で教育学部に進まれました。

大学では、教育とはどうあるべきかを最初に学びました。
でも、なんかピンとこなかったんです。
知識だけを与えて、どうすればいいかを子どもに丸投げしているようで。

せっかく入った教育学部で、早々に「これでいいのかな?」と壁にぶつかってしまいました。

ボランティアでアフガニスタンに学校を建てたり、写真部で舞台の撮影したり、色々やっていましたが、自分がやるべきことは何か見出せないまま悶々としていました。

写真部がきっかけで、いつの間にかデザイン事務所でバイトして、そこで勧められるままに入社試験を受けて、新卒で広告会社の電通に入社しました。

—教育へ関心があった一方で、クリエイティブの才能もあったんですね

デジタルのクリエイティブ部門で、5年半働きました。
心のどこかでは、子どもに関わる仕事がしたいと思っていました。
せっかく働くなら、伝えることのプロになりたいと思って働いていたんです。

でも、仕事も忙しいし、充実もしている。
何がしたいのか、自分でもよくわからなくなっていました。
いつの間にか、手段が目的になっていっていたんです。

それで働きながら、4年目に保育士の資格を取得しました。
自分の思いを途絶えさせたくなかったんだと思います。

そして6年目に、広告の賞をいただいたタイミングもあり、一区切りをつけることにしました。

—教育の取り組みの中でも、なぜアーダコーダとして子ども哲学を始められたのでしょうか?

まず、単純に子どもたちと話すのがとても好きなんです。
子どもたちの発想には、いつも驚かされます。

「なんで、うんちは、触っちゃいけないの?」
「お水はどこから、きているの?」

着眼点も独特だし、答えもわからないような疑問ばかり。
でも、大人になるにつれて、いつの間にか、疑問をもつことを忘れて、常識的な発想しかできなくなってしまいますよね。

世の中も、そんな子どもならではの好奇心を大切にしないような気がして。

子どもが持つ好奇心をいつまでも失わないでほしいと思って、アーダコーダという名前で子ども哲学をはじめようと思いました。

インドの列車内。大学時代には、昔から憧れていたインドを旅行しました。

Interview Q3.どんな高校時代でしたか?

「学校に居場所もない、人生で一番ツラかった。」

—教育に興味を持つ川辺さんは、どんな高校時代だったのでしょうか?

高校時代が、人生で一番ツラかった時期かもしれません。

小学校で受験をして、中学から全国でも有数の進学校に入りました。
中学時代はまだよかったのですが、高校になるとドンドン落ちこぼれてしまって。
部活も高校になったら、急に厳しくなって、すぐにやめてしまいました。
高校2年生の頃には、学校には完全に居場所がなくなっていましたね。

父親に「高校をやめたい」と告げると、「やめてどうするんだ」と。
「インドに修行に行きたい」って本気で言ってました。

その頃から哲学的なことに興味があって、インドと言えば悟りの境地ですから(笑)
さすがに、父親は「そんなものは、ただの逃げだ!」って猛反対でした。

—高校も辞められず、居場所もない。ツラいですね。

ただ、そういう状況にしたのは、自分の責任でもあるわけです。
この先どうしようかと、真剣に考えはじめました。

周りは優等生ばかり。もちろん彼らの目標は大学受験です。
彼らと一緒にいたら、世の中のことはわからないまま大学に行くことになる。
そう思って、地元の友人とばかりつるんでいました。

同世代なのに、いつの間にか触れ合わなくなってしまった彼らに興味がわいたんです。
なかには、家庭の事情で高校に行けない奴もいました。
毎日たむろして、人生をどう考えているんだろう?
自分と考え方や環境が違う人たちに触れることで、自分が大切にすべき価値観を見つけたかったんです。

—それは見つかりましたか?

10歳下に妹がいるのですが、「なんでお月様はいつもついてくるのか」とか、考えつかないような疑問ばかり抱いていて、子どもって面白いなって思っていました。

それで、保育士になろうと思ったのですが、父親から「それで世の中をどう変えるんだ」と言われてしまい、世の中をどうしたいかなんて考えたこともなかったんで、悶々としてしまいました。
同級生に相談しても「そんなことを考えてエラいね」と話が噛み合ない。

相変わらず答えのでないまま、保育士がダメなら、子どもに関われる小児科医になろうと医学部を受験しました。
ですが、結果はあえなく不合格で、浪人してしまいました。

予備校でも将来のことを考えてばかりで、見かねた予備校の先生が、「実際に会ってみたらいい」と現役の医大生を紹介してくれたんです。
沖縄の方だったのですが、自腹で飛行機に乗って会いにいきました。

その医大生の中に、僻地医療を目指している人がいて、「なぜ、医学部目指しているの?」と聞かれて、子どもが好きで、、、と歯切れの悪い返事をすると、見透かされたように、「だったら、教育学部でもいいよね」と言われてしまいました。

その人は、研修でアフリカに行ったことがあったそうです。
現地では、子どもを治療しながら、その横ではどんどん子どもが増えている。
産めば産む程、治療しなければならない子どもが増えていくわけです。
その時に、医療とともに教育の大切さを痛感したそうなんですね。

医学部を目指していたのは、自分のやりたいことというよりも、親の期待に応えたいという思いからだったような気がします。
その話を聞いた瞬間、心に素直に従って、教育学部への進学を決めました。

高校1年生の頃。10歳下の妹の自由な発想には、いつも驚かされました。

Interview Q4.高校生のみんなにアドバイス!

「無理に世界を救うなんて、考えなくていい。」

—将来を悩んでいる高校生は多いと思います。

高校時代は、いろいろと悩むことも多いでしょう。
でも、無理に解決しようとしなくていいと思います。

「これからの社会をつくるのは、キミだ」と言われて、社会の問題を解決しなければならないと思ってないでしょうか?

解決できれば、もちろん素晴らしいですが、解決できないこともある。
でも、それで、いいと思います。

皆さんが生まれてきた時、お父さんもお母さんも、世界を救って欲しい、なんて考えていなかったでしょう。
たぶん、「生まれてきてくれて、ありがとう」って思っていたはずです。
だから、皆さんは、いるだけで価値があると僕は思います。

今の社会の問題をつくり出したのは、皆さんじゃなくて、今の大人たちです。
そんな問題まで背負う必要はない。

それよりも、いつもまでも好奇心を失わずに、自分と違う人や価値観をおもしろがって、やりたいことをやればいいと思います。

好奇心を持ち続けて、やりたいことにチャレンジしてください。


川辺 洋平(かわべ ようへい)さん
NPO法人 アーダコーダ 代表理事

・1983年東京生まれ。30歳(2014年3月現在)。
・東京学芸大学教育学部卒。広告会社の電通を経て、2014年NPO法人アーダコーダ設立予定。
・日常の疑問に対して、哲学対話をする「子ども哲学」を通して、自由な発想で生きられる社会をつくる。
・「子ども哲学」を授業の一環として導入する小学校や中学校が増えている。
・4歳と2歳の子を持つ父。クラウドファンディングサービス”Shooting Star”ゼネラルマネージャーとして、またイラストレーターとしても、雑誌や書籍などで活躍中。