世界を変えるU33

ファッションで世界を変える

MixiCheck

ひかり輝くジュエリーで、
世界の貧困をなくす。

白木 夏子(しらき なつこ)さん
株式会社HASUNA 代表取締役兼チーフデザイナー

白木 夏子

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Interview Q1.どんな問題に取り組んでいますか?

「ジュエリーの輝きのために、地球に暗がりをつくってはいけない。」

—白木さんが代表をつとめるHASUNAの取り組みを教えてください?

HASUNAはジュエリーブランドとして2009年に創設されました。
表参道に本店があり、新宿伊勢丹などにもお店があります。
人と社会、自然環境に配慮したエシカル(倫理的)なジュエリーブランドとして紹介していただくことが多いです。

金、プラチナ、ダイヤモンドなど、ジュエリーに使われる素材のほとんどは、限られた地球の資源です。
何億年もの気の遠くなるような年月、地球に眠っていた素材を掘り起こし、小さなきらめくジュエリーに仕上げていくからこそ、つける人を輝かせ、幸せにしてくれるのだと思います。

けれど、その輝きの一方で、ジュエリー素材の採掘現場では、さまざまな問題が起きています。

これまでのビジネスは、素材を安く仕入れ、高く売ることで利益を追求してきました。
素材が、どこでどのようにつくられているかには、ほとんど意識が向けられることはありませんでした。
行き過ぎた利益至上主義は、無駄を省き、コストを極限まで抑えようとしました。
その結果、ジュエリー素材の採掘現場では、労働者は不当に安い賃金で働かされ、児童労働や強制労働が行われ、貧困から抜け出せない人たちをたくさん生み出しました。
環境への配慮もなく、化学物質による環境汚染も深刻化しています。

—ひかり輝く美しいジュエリーが、誰かの苦しみの上に成り立っているのはあまりに悲しいです。

ジュエリーの輝きのために、誰かが傷つくことは正しい姿ではないと思います。

つける人も、つくる人も、そして自然も。
地球上の全てを幸せに導くジュエリーをつくることが、私たちHASUNAの使命だと考えています。

HASUNAの代表であり、チーフデザイナーである私自身も、ペルーの金鉱山、パキスタンの宝石鉱山、ミクロネシアの真珠養殖場などジュエリーづくりの末端の現場へ足を運びます。
直接、扱う素材のルーツをめぐり、そこにいる人と社会、自然環境に配慮しなければ、ものづくりに責任をもてませんよね。

最高のジュエリーをつくりあげる中で、できる限りの配慮をする。
鉱山労働者、職人、デザイナーなどジュエリーに関わるすべての人たちが人としての生活を守られ、清らかな心で仕事に臨む。
これができてこそ、本当の意味で最高のものづくりができるのではないでしょうか。

—エシカルジュエリーをつくることで、貧困問題などの解決に貢献できるのですね。

すばらしいジュエリーをつくり、多くの方に受け入れられれば、さらに多くの素材を買い付けることができます。
そうすれば、さらに多くの現地労働者の方や職人たちにちゃんとお金がまわる仕組みがどんどん広がっていきます。

そのためにも、デザイン、品質、サービス、そのすべてにおいて、感動を生み出せるジュエリーをつくっていきたいですね。
世界中から愛されるジュエラーになることが、社会貢献につながっています。

ペルー金鉱山採掘現場を視察。現地の人々に直接会い、労働環境や素材の状態、採掘状況について自分の目で確認します。

Interview Q2.今の取り組みをやろうと思ったきっかけは?

「援助ではなく、ビジネスで、負の連鎖を断ち切る」

—エシカルジュエリーに取り組むきっかけを教えてください。

短大に入ってすぐに学校で、フォトジャーナリストの方の話を聞く機会がありました。
エチオピアで飢餓に苦しんでいる人々、森林破壊、戦争といった「社会の負の側面」の現地のリアルな写真と話に衝撃を受けました。
生まれてはじめて、テレビの中の遠い世界の話ではない、「世界の真実の姿」に触れました。

そして「今すぐひとりひとりが動き出さなければ、地球は破滅してしまう」という言葉が強く印象に残ったんです。

それまではファッションや芸術にばかりに関心が向いて、世界の現実に興味を持っていなかったことを反省しました。
そして短大卒業後は、漠然と海外にいこうと思っていたのが、少しでも自分の力を世界をよくすることに使いたい、そのためにもっと学びたいと思うようになりました。

—短大卒業後、イギリスへ留学。世界が抱える問題について学びにいったのですか。

ロンドン大学へ、国際開発の勉強をしに行きました。
ただ、授業でいくら貧困問題を学んでも、現地を見なければ、はじまらないと思っていました。
アジア・アフリカ・中南米を数十ヶ国と旅をする中で、インドのとある鉱山労働者の村を訪れました。

そこで見た、鉱山労働の現実は衝撃的でした。

採掘労働者たちの環境は劣悪で、給料も少なく、1日1食、食べられるかどうか。
子どもが生まれれば、労働力になるか、女の子なら売春宿に売られてしまう。

その鉱山で採掘されていたものは、私たちにも身近な携帯電話や電化製品にも使われるレアメタル。
ジュエリーで使われる金も、近くの鉱山で採掘されていました。
私たちが高いお金を払って買っているのに、そのお金はどこにいってしまっているのか。
彼らには、雑巾を絞って絞って、ようやく出た滴の1滴だけしか与えられていないような状態だったのです。

しかも、子どもの頃からそんな環境で働かされ、教育もまともに受けることができない。
自力で抜け出すことは、ほとんど不可能な状況でした。
この負の連鎖を断ち切るには、どうすればいいか。
国連やNGOなどの援助団体で支援するだけでは、根本的な解決にならないと思いました。

ビジネスから生まれた状況ならば、ビジネスの仕組みを変えなければならない。
逆に、正しい倫理観をもってビジネスに取り組めば、こういう問題は起きないかもしれない。
素材がどこからきて、誰が取り扱っているかを確認し、支払ったお金が現地にちゃんといく仕組みをつくろうと思ったんです。

ジュエリーは子どもの頃から大好きでした。
つける人を華やかに飾るジュエリーたちが、途上国の異常な現実の上でつくられているのは、あまりにショックです。

それで、エシカルジュエリーを手がけるHASUNAを立上げました。

HASUNAでは、結婚指輪や婚約指輪をはじめ、ネックレスやピアスなどさまざまなアクセサリーをつくっています。

Interview Q3.どんな高校時代でしたか?

「やりたいことを目指せない。海外に夢を抱いていた。」

—白木さんの高校時代を教えてください。

あまり人付き合いが得意な方ではなかったのですが、地元の公立中学から私立の進学校に進学してから少しずつ変わっていきました。

授業が少し変わっていて、教科書以外にビデオや本を教材にしたりして、テストのための勉強というより教養を教えてくれる学校でした。
自分と価値観の近い友人や将来のことを語り合う友人にも出会えて、楽しく過ごしていましたね。

—高校時代の夢は何でしたか?

美術や芸術関係に幼い頃から興味があって、物心ついた頃から、よくアクセサリーをつくっていました。
中学・高校の頃には布屋さんで布を買ってきて洋服をつくったりもしていましたね。
将来、こういう仕事ができたらいいなと思っていました。

ただ、母がファッションデザイナーで、父が繊維関係の商社にいたので、その世界の厳しさを知っていたのでしょう。
芸術系に行きたかったのですが、親に強く反対されました。
進学校だったので、親からは医者や弁護士になってほしいと言われて。
ただ、私自身、そういった仕事には、あまり興味がなくて。

やりたいことも目指せず、親の期待にも応えられない。
進路に迷っていて、勉強にも身が入らない。
友人たちは目標に向かって頑張っていて、どんどん自分の将来が不安になっていきましたね。

その頃、同居していた祖父から言われたんです。
「日本の女性は、日本にいても活躍できない。仕事では差別される。結婚したら、人生は終わりだ。夏子には海外に行ってほしい」と(笑)。
祖父は海外で生活したことがあり、とてもユニークで大好きな人でしたから、その言葉に影響されたのだと思います。

ぼんやりながらも、世界を渡り歩きながら、世界中の人たちと仕事をするカッコいい自分像を思い描きはじめて、いつかは海外に行こうと決めていました。

高校時代は、進路に迷っていて、どんどん自分の将来が不安になっていきましたね。

Interview Q4.高校生のみんなにアドバイス!

「世界は、想像の200倍は広い。」

—高校生へメッセージをお願いします。

10年後、どんな自分になっていたいですか?

10年前の私は、今の自分を具体的に想像はできなかったけれど、今のような生き方にはぼんやりと憧れていました。

美しいジュエリーをつくること。
世界を旅すること。
そして、それが社会貢献につながっていること。

どれも自分が好きで、やりたいと思っていたことです。
やりたいことを追求できるのは、幸せだし、成果も出やすいと思いますね。

時間は有限ですから、自分のパワーをどこに使うのかが大切です。
究極的に、自分が好きなことなら頑張れるし、たとえ成果がでなくても、やりきったと思えれば納得もできるはず。

実際私も、今の仕事をする前に金融の仕事をしていた時は、成果もあげられず、全然楽しくなかったですね(笑)。
きっと好きなことじゃなかったんだと思います。

私は短大に入学してから必死に勉強して、イギリスに留学しました。
希望する進路に進めなくても、ばん回するチャンスはいくらでもあります。
たとえ、受験に失敗しても、決して終わりではありません。

受験勉強をしていると、周りの意見に左右されることもあると思います。
でも、世界は自分が考えているよりも、100倍も、200倍も広いです。
いま見えている世界がすべてではないと思ってほしい。
次に進めば、また、新しい世界が広がっていますよ。

たとえ失敗しても、けっして終わりじゃない。人生、挽回するチャンスはいくらでもあります。


白木 夏子(しらき なつこ)さん
株式会社HASUNA 代表取締役兼チーフデザイナー

・1981年鹿児島生まれ。32歳(2014年3月現在)。
・南山短大卒。ロンドン大学キングスカレッジ卒。開発地理学を学ぶ。
・国連インターン、金融業界を経て、2009年HASUNAを設立。
・人と社会、自然環境に配慮したジュエリーブランド事業を展開。
・ルワンダ、パキスタン、コロンビア等の鉱山労働者、生産者と共にジュエリーを制作。