動物医療の教育や現場では、「動物」の知識だけでなく、「人」に関する知識も大切であると考えます。そのため、動物を飼う人の心理分析にも興味を持って取り組んでいます。人は実に多様性に溢れています。動物病院を訪れる飼い主さんも、それぞれに事情を抱えていたり、様々な考え方を持っています。愛玩動物看護師や獣医師はそれらをしっかり読み取って対応することが求められています。動物とだけコミュニケーションをとっても動物の看護はできません。人に対しても探求心を持って、肯定的な気持ちで向き合うためには訓練が必要です。授業では、飼い主とのコミュニケーションを図るための知識や技能を身につけることを重視し、また、動物医療の一員としての人間性を高めるために、人の心理や倫理、法律、教養教育にも力を入れて指導しています。
「『動物臨床看護学各論III』では、これまで積み上げてきた動物臨床看護に関連する科目で修得した学びを土台に、より専門的に病態、臨床病理、診断、治療に関する知識を深め、実際の動物看護に必要な知識や考え方を総合的に理解するための授業です」と内田教授。動物看護で必要なのは、動物に関する知識だけでなく、さまざまな知識の組み合わせ。広い視野と「プラスα」の得意分野を持った愛玩動物看護師の育成に力を入れています。
「動物は好きだけど、人間はあまり好きじゃない」という人は、実は愛玩動物看護師に向いていません。動物に関わる仕事を目指す人は、動物と共に生きる人間にも強い関心を持っていただきたいですね。
専門科目/動物看護学概論、ヒトと動物の共通感染症、動物感染症学I 他
略歴/麻布大学名誉教授。元(公財)目黒寄生虫館 館長。学生と共に小笠原父島で外来生物の寄生虫を調べている。