研究テーマはベンチャーの経営チームの組成です。ベンチャーが急成長するには、創業を主導する起業家と初期のメンバーがどんなチームを組み、どう経営を支えれば良いかを研究しています。その際のキーパーソンとして、私が提起しているのが“滑業家”です。組織が大きくなると人事の専門家が必要になり、財務や情報の人材も必要となるなど、次々と新しい課題が生まれます。滑業家は課題が生まれる度にそれを受け持ち、忙しくしながらもある程度余裕を持って、次の課題が生まれるとまた対応するという役割を担います。この研究の特徴は、私自身の実務家としての経験を学術的な観点から解き明かそうとする点にあります。研究を通じて、カリスマ的な創業者でなくてもベンチャーの参画を通して有意義なキャリア形成ができることを示したいと考えています。
2年生の「ベンチャー企業論」では事業計画書のフォーマットを提示し、小林先生の講義により必要な項目を埋めていきます。最終的には学生一人ひとりが事業計画書を作成して提出、発表会も行います。「アルバイト経験を活かして新しい飲食店を計画したり、趣味を活かして新しいビジネスを起ち上げるなど、多彩な事業計画が集まります。自分の興味あること、好きなことから発想すると、魅力的な内容になりますね」と小林先生。3・4年生になり学外のビジネスプラン・コンテストに応募する学生もおり、小林先生はその指導もしています。
私はベンチャーの創業に参画したことで振り幅が大きく、楽しい人生を送れました。自ら起業しなくてもベンチャーの初期の経営メンバーに加わって、自分なりの役割を果たすという道もあります。ぜひ挑戦してください。
慶應義塾大学経済学部卒。日本IBMに勤務した後、慶應義塾大学大学院にてMBAを取得。通信ベンチャーのイー・アクセス(現・ソフトバンク)の創業に参画し、東証マザーズおよび一部上場に貢献。携帯子会社イー・モバイル(現・ソフトバンク・ワイモバイル事業)の創業も手掛ける。イー・アクセスとイー・モバイルの副社長を経て、神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。2013年多摩大学に着任。