室町幕府は一般的にマイナーな存在ですが、近年その研究が進展し、再評価されています。室町幕府といえば将軍と地方を支配する守護がけん制し合っているのが通説ですが、幕府が長く続いた背景には将軍の権力を支える何かがあったと考えられます。その際注目されるのが将軍の直臣です。なかでも私は日常的な行政・司法・立法をつかさどる奉行人に注目しています。奉行人は様々な政務処理や行政文書の作成・保存・管理などを務める、現在でいう官僚のような存在。その働きは鎌倉幕府よりも大きく、公文書の管理や法の体系化が進み、幕府権力を支えました。公文書管理などは現代にも通じる課題です。歴史を紐解き、それが過去にどう行われ、国家にどういう意味をもたらしてきたのかを考えることは、今の課題を理解し解決するうえでも重要だと思います。
歴史マンガやドラマの時代考証や描写、歴史学研究との関係なども研究しています
社会学科において歴史を学ぶことに、「現在の目線だけでなく、過去から現在を相対的に見てほしい」と話す田中先生。授業では高校の歴史で習わないテーマから歴史とマンガの関係、他の科目を視野に入れた内容まで幅広く取り上げ、過去から現在への相対的な視点を養います。ゼミでは歴史を学術的に研究する礎を身につけるために「調べること」を重要視し、図書館での文献調査を義務化。思い込みだけではなく確たる証拠に基づく立論を徹底して学びます。学内に恩頼堂文庫という古文書・古典籍群があり、本物の歴史史料に触れるチャンスも。
史料購読の授業。学びは学内だけでなく、博物館のバックヤード見学や学芸員との交流なども行っている
大学は高校に比べて自分の思うように勉強ができます。その際の助けとなるのが教員と図書館。分からないことは積極的に教員に質問し、知識の宝庫である図書館を存分に活用して、勉強の楽しさをぜひ味わってください。
「歴史的なものの見方を身につけると、現在の見え方が変わり、新たな気づきがあります」
専門:日本中世史
立命館大学大学院文学研究科博士課程後期課程修了 博士(文学)。2022年現職に着任。室町幕府の事務方ともいえる奉行人に着眼した理由は、2年間サラリーマンとして事務仕事を経験したことも大きい。「目立たないが欠かせない存在というのが個人的に気になった」と話す。先行研究も整理された史料もなかったので、各史料集から自力で史料を集め分類し、奉行人の在職履歴など明らかにした。
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