主な研究は「人の健康を守る室内環境づくり」。特に空気環境に注目しています。問題の原因と解決のヒントは現場にあると常々考え、まず足を運び、つぶさに観察し、現場の話に耳を傾けることを大事にしています。「シックハウス症候群(SHS)」が社会問題であった頃、新築住宅でSHSの原因とされる空気の汚れを測定し、きれいにする方法を検討してきました。完璧な解決方法は得られませんでしたが、多くの研究者が知恵を絞り協力したおかげで2003年以降、住宅で常時換気ができるよう法律が改正されました。これからの建築・住宅に求められるのは省エネルギーを超えるZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)/ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)、脱炭素化。そこにいる人が健康で快適に過ごせる室内環境づくりを目指し研究を続けるつもりです。
担当科目は主に「建築環境学」と「建築設備」。「建築環境学」では室内の空気・温熱・湿気・音・光環境の原理・原則を学修し、健康で快適に過ごすための具体的方法を見出し、実践することが目標です。「建築設備」では、空気調和設備や給排水設備など、建物の「内臓」について学びます。どの設備がどのような役割を果たしているのか、建物に出入りしていてもあまり目立たない部分の重要性を理解してほしいです。卒業研究では、ふだんの生活からテーマを見つけ、社会で必要な客観的で論理的な思考力を養っていきます。
建築設備業の技術職はいわば縁の下の力持ち。建物ごとに工夫の余地があり、達成感のある職業です。進路は理系/文系にこだわらず、将来どうなりたいかを考えて選択してみましょう。
専門:建築環境・設備
千葉工業大学建築学科卒業、新日本空調(株)入社。病院や半導体工場など建築設備の設計業務に携わりながら、人の健康を守る空気環境に関する研究に興味を持つ。7年後に同社を退社し、千葉工業大学大学院修士課程を経て東京大学大学院へ進学。博士(工学)取得後、2002年4月~2022年3月まで熊本大学工学部建築学科で助教、准教授。2022年4月より現職。