刑務官として、刑事施設に収容されている人の生活全般の管理及び社会復帰に向けた支援を行っています。刑務官を目指したきっかけは、大学4年生の時に読んだ1冊の本。その本を読み福祉で学んだ知識や技術を、現在の職種でも生かすことができると思いました。矯正の仕事は、規範意識が鈍磨している人が相手。人の性格や考え方はすぐには変わりません。しかし時間をかけることで、歪んだ思考を変えていくことができます。そのため福祉や心理学を専門とする職員と協力して、冷静に粘り強く指導していくよう心掛けています。私自身が関わった受刑者から、出所の時に涙ながらに「ありがとうございました」と言われた時は大きなやりがいを感じました。
人を「もてなす」心を養うことを、大学の理念としている点が魅力的でした。今でもホスピタリティ精神は身についており、人を相手にする今の仕事にも生かされています。また、大学4年間無遅刻無欠席で、一日の講義で履修できる講義はほとんど受講しました。福祉の分野にこだわらず、様々な分野の授業を可能な限り履修することで知識の幅もぐっと広がったと思います。先生方との距離が近く、卒業後も相談に乗っていただき、社会人の先輩としてアドバイスを頂けたことも良い思い出です。これからも介護福祉士の資格を生かし、介護を必要とする受刑者の生活を支援しながら、社会復帰後の生活につなげていきたいと思います。
全国に先駆けて、平成29年12月、長崎刑務所に社会復帰支援部門を新設し、高齢者、障害者等の福祉的支援が必要な受刑者の収容を開始しました。また、令和4年10月から、知的障害受刑者モデル事業も始動し、それぞれの受刑者の生活の質の維持・向上を目的とした支援を行っています。これらの事業は、その効果を検証しつつ、ゆくゆくは全国の刑事施設に展開していくことを目標としています。なので、これからの矯正業界は、福祉を学び、その視点を持った刑務官が必要になってきます。専門的に福祉を学び、そのノウハウを矯正の世界で発揮してみませんか。
長崎刑務所 佐世保拘置支所/人間社会学部 社会福祉学科/2007年卒/刑事施設に収容されている人の生活全般の管理や、社会復帰に向けた支援、施設の維持管理業務を行う井上さん。接し方ひとつで人の人生を良い方向に向けることができる、と日々改善更生に向けた指導を行っている。「あらゆる方面から情報収集を行い、対象者がなぜ現在の境遇に至ったのか、その背景を探り、問題点を突き詰め、そこにアプローチするよう努めています」と罪を犯した人を一人でも多く更生させるため、目を背けず丁寧に向き合っている。