東京都内に網の目のように張り巡らされた9路線を運行している東京地下鉄株式会社(愛称・東京メトロ)の車両整備士として法定検査業務などを担当しています。たくさんのお客さまを乗せて東京中を走る車両ですので安全性と定時運行に対する責任は重く、点検・検査に妥協は許されません。専門知識や高い技術力はもちろん小さな異変や不具合を見逃さない集中力と細心さも求められます。人の目には触れることのない私たちの頑張りが安全輸送を支えているということに誇りを持っていますし、朝のニュースで「鉄道運行状況に乱れはなく通常どおりです」と読み上げるキャスターの言葉を聞くと心の中で密かにガッツポーズ(笑)を取りたくなります。
私は鉄道マニアでもなく普通科高校出身だったため、入学直後は鉄道の基礎知識や工具の取り扱いなどの面でクラスメイトたちに後れを取っていました。ただ、それが“追いつき追い越すためのバネ”になったことは確かです。もちろん、先生方は基礎から丁寧に教えてくれますし、「疑問があれば質問してくれた方が嬉しい」と声を掛けてくれる優しい方ばかり。休日でもメールで質問するとすぐに答えが返ってきたことや始業前や放課後に電気回路図の読み方を個別指導してもらったことは忘れられません。また、校内には実際に使われていた台車(車両下部の走行装置)があり、本物を触って学ぶことで将来の仕事をイメージしながら学ぶことができました。
鉄道業界で働くためには、安全輸送を第一に考え、どんな状況においても妥協しないという姿勢が必要です。特に車両の整備においては些細なミスも許されないので確かな知識と技術、さらには問題解決の迅速さが求められます。そういう車両整備士としての基本を教えてくれたのがHITの先生方でした。また、私自身が専門学校に入学してから心掛けたのは、何をするにしても基本を大事にして“小さなことでも疎かにしない”という習慣をつけること。それがあれば学業はもちろん人間的にも成長できるのではないでしょうか。どうか皆さんも自分がどんな職業に就きたいのか、そのためには何をどう学べばいいのかをしっかりと考えてほしいと思います。
東京地下鉄株式会社 勤務/鉄道システム学科 卒/2021年卒/クルマ好きだった父親の影響で小さな頃から整備に興味を持っていた森角さん。高校時代は鉄道会社か航空会社かで迷ったこともあったが「多くの人が毎日利用する身近な存在であること」、そして「現場を熟知した先生から直接教えてもらえること」に魅力を感じてHITで鉄道車両の整備を学ぶことを決意。在学中はバイク・電車・バスを乗り継ぎ片道2時間かけて通学したという。その頑張りが実を結び念願の東京地下鉄株式会社に就職。動力車操縦者免許を取得し「自分で整備した車両を検車区(車両基地)内で運転できるようになること」が当面の目標と言う。