好奇心旺盛で実は同じ仕事を続けるのはあまり得意ではないんです。でもこの店では毎月変わるメニューを全部考えなければならないので、常にインプットし続けなければアウトプットが間に合わない。そういう意味で僕の性格とお店の相性がいいと思っています。料理の道に進んだのは「人と関わるのが好き」の先に「食」があったから。私が作った料理をおいしいと食べていただくことはもちろんうれしいのですが、コース料理だからと言って堅苦しく感じることなく、お店の空気感のなかで会話を楽しみながら食事をしていただくことに注力していますし、そこに何よりのやりがいを感じています。もちろん料理のクオリティにもこだわっています。
元々は大学の体育学部に進学したのですが在学中、バーでアルバイトをしていました。バーでの仕事はカウンター越しに人の表情が見られるんです。当時の先輩に「ここはカウンター越しにどんな立場の方とも対等に話ができる」と言われたことに刺激を受け、自分に何ができるか考えたときに「調理」がありました。人と関わることと食べることが好きをかけ合わせた業界ですね。最初の頃は、「人」=「お客様」としか考えていませんでしたが、実はスタッフや料理の手前にいる生産者さん、ジャンルが違う同業者など、たくさんの「人」と関わっていることにも気づきました。
次は自分の店を出したいと思っています。とはいえ、自分がやりたいこととお客様が求めていらっしゃることのどちらも実現したいので、今はその噛み合うところ、落としどころを模索しています。自分の見られる範囲で可能な限りコース料理だけでなくアラカルトもご提供できればいいですね。私の料理は和の要素を取り入れたフランス料理なので、休みの日にはフランス料理に限らずさまざまなジャンルのお店に伺い、自分がシェフであることを名乗ったうえで、その店の提供する料理について質問しています。また、若手料理人が集まる"CLUB RED"での中華や和食など他のジャンルの方たちと垣根を超えた交流も独立に向けて背中を押されている気がします。
株式会社H&C プルミエレタージュ/調理師技術科/2009年3月卒/大学の体育学部を中退、調理師を目指し東京調理製菓専門学校へ。卒業後は、小川軒、TAKAZAWAなどのレストランで修行を積んだあと、株式会社H&Cに入社、他店舗勤務を経て、6年前のオープン時から吉祥寺プルミエレタージュシェフとして活躍している。