私はオーストラリア国立大学で、日本語教員として働いています。一番やりがいを感じるのは、学生たちの日本語が上達し、日本語を好きになってくれたことを実感できた時です。私は大学生だけでなく、付属高校の生徒にも日本語を教えていますが、今年はその卒業生が、大学3年生の日本語クラスに飛び級で4人入ってきました。その上達ぶりはもちろんですが、大学に進学しても日本語を専攻してくれたことは教員としてとても嬉しいことです。これからも、日本語だけでなく、日本の良さを一人でも多くの人に理解してもらえるような教育をしていきたいと思います。
私は「日本語」という言葉だけではなく、日本の文化、社会、日本人の考え方にも触れ、「なぜそのような言葉があるのか」「なぜそのような表現をするのか」ということを教えるようにしています。例えばオーストラリア人が日本の家賃を調べるとその高さにびっくりするのですが、実はオーストラリアの家賃の支払いは2週間に1回が基本。日本の家賃表示は1ヶ月の料金(オーストラリアの2倍)だということを知らないのです。そんな違いがあるということは教科書にも書いていません。「日本へ行って使える日本語」をマスターするためにはこうした常識のギャップを埋めることが必要です。そこがわかると理解が深まり、応用が利くようになるのです。
大学時代はできることは何でもやろうと、英語のほかにもスペイン語、ポルトガル語、中国語の単位も取りました。サークルはフラメンコに夢中になり、バイトもしながら取れる資格もできるだけ取りました。友人には「学校に住んでいるみたい」と言われるほど朝から晩まで大学にいましたが、最高に充実していた4年間だったと思います。例えばポルトガル語ができることで仕事の幅が広がることもあり、学生時代にやってきたことは何一つ無駄になっていません。少しぐらい睡眠時間を削ってでもいろいろな事に夢中になって過ごす4年間を送ること。それが人生を豊かにしてくれるはずです。
オーストラリア国立大学勤務/外国語学部英米語学科/2003年3月卒/中学生の頃から海外で「日本語教員」として働きたいと思い、日本語教員の資格と高校英語の資格の両方が取得できる神田外語大学へ進学。大学時代は、4カ国語を勉強すると同時にフラメンコに夢中になり、全国学生フラメンコ連盟事務局長も務めた。卒業後に、まず「外国に住む」ことに慣れようと渡豪し、高校のアシスタントボランティアからキャリアをスタート。その後、応用言語学の修士号の取得をきっかけに、オーストラリア国立大学に移り、現在に至っている。