プラズマで皮膚の再生を目指す
プラズマで皮膚を再生する
私が長年研究しているプラズマは、固体、液体、気体に続く物質の第4の形態と位置付けられるものです。温度を高めていくと、物質は、固体から液体、液体から気体に変化します。さらにその温度を上げていくと、分子がバラバラに分解されて原子になり、原子も、原子核からその周りを回っている電子が離れ、イオンとして存在するようになります。この状態がプラズマで、自然界では滝に発生するマイナスイオンもプラズマですし、雷もプラズマの一種です。さまざまな分野で工学応用されていて、出力を高くすれば10センチ以上もある鋼板を溶断することもできますし、空気清浄機や冷蔵庫に発生装置を組み込んで殺菌作用をもたせた家電も普及しています。
最近の研究で、このプラズマが人体の組織の活性化や再生を促すことがわかってきました。今、研究室では企業と共同で、この仕組みを応用した医療用の装置を開発中です。切り傷や火傷を負った患部にプラズマを照射することで、まずは殺菌し、さらに出力をしぼって長時間照射することで、細胞を活性化させ、その治りを早くすることが期待されています。装置を小型化して持ち運べるようにできれば、屋外での応急措置にも用いることができますし、家庭用に使いやすさを追求していけば、美顔器として、ニキビの予防や治療にも使えるようになるかもしれません。
さらに、この装置を応用してES細胞やiPS細胞の培養に生かそうという研究も他大学と共同で進めています。臓器や皮膚、神経細胞などを自由に作り出せる再生医療は、さまざまな病気への治療が望まれていますが、うまく分化させて、短期間で移植用の組織に作り上げるまでには、まだまだ課題が少なくありません。培養装置内でプラズマを発生させることで、組織の分化、培養を効率化できれば、再生医療の実用化が、さらに大きく近づくでしょう。

「病気の予知・予防も、医療工学に求められる大きな役割」と平田孝道教授
ICチップで24時間、体をモニタリング
プラズマの恩恵を最も強く受けて発展したのが半導体です。ICチップは、プラズマの力を利用したスパッタリングという手法で、薄い金属の膜を何層も作り、そこに電気が通る極細の溝を刻んでいきます。そのICチップの溝にある種のタンパク質を置き、そこに血液や唾液をかけると、その成分によって電気抵抗が発生するという現象をつかみ、医療器具への応用を進めています。
その好例となるのがアレルギー反応テストでの応用です。現在はパッチテストといって、アレルギー物質を含んだシールを肌に貼って赤くなったら、その物質のアレルギーだと診断しています。しかし、このデバイスを使えば、血液や唾液を一滴そのICチップに垂らすだけで、電気の流れる量が変わって、どの物質に対するアレルギーがあるかを自動的に判定できます。流路を細かく工夫してやることで、血液を血清と血球に分けるといった前処理の手間も省略できますし、流路の数を増やせば、一度に何十種類ものアレルギーを捕まえることができます。
また、バイオセンサーとして、生体情報のモニタリングにも応用可能です。例えば糖尿病の患者さんの診断と治療の基本となる血糖値を測るには、今は、針で指先を刺して取り出した血液に試薬を混ぜて判定していますが、ICチップを絆創膏のように皮膚に貼って、血中のグルコースの量から血糖値を測るということもできます。さらに入手したグルコースの量は、スマートフォンなどを介して、24時間モニタリングできます。現在の糖尿病の診断と治療は、空腹時の血糖値を測るのが基本ですが、日常生活を送るなかで食事によってどう変化するか、その後、どのように下がっていくかまで継続して計測するのは困難です。しかし、この技術が実用化できれば容易に計測できるようになりますから、今、世界中で急激に増えている糖尿病患者さんにとって大きな福音になるに違いありません。
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医用工学とはどんな学問?
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システム理工学部 生命科学科(2026年4月、生命科学課程へ改組予定)

進化する技術・医療を学び続け、患者さんを支える臨床工学技士でありたい
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保健科学部 臨床工学科(2022年4月より保健科学部から医療技術学部に名称変更)

技術と仕事を通して、人と社会に貢献しているという実感がいまのやりがいです
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システム理工学部 生命科学科(2026年4月、生命科学課程へ改組予定)