微生物の力を使って化学物質を分解
微生物の力を利用した浄水技術の研究
私たちの日常生活の中で生じる生活排水や、工場などから排出される産業排水など、人間が使った水にはさまざまな物質が含まれていて、そのまま川や海に流してしまうと、環境を汚染してしまいます。そのため浄水技術の研究は、環境工学の中でも欠かせないテーマの一つになっています。
いくつもある浄水方法のうち、私は微生物の働きに着目し、複数の研究を並行して進めています。代表的なものは、ジオキサンという工業排水に含まれる化学物質を、微生物の力で分解処理する方法の研究です。
現在、ジオキサンは法律でその排水基準を決められているので、確実に処理しないといけません。現在、唯一効果のある処理方法は、特殊な薬品と紫外線を使うものですが、薬品代や電気代が高くつくのが難点です。やはり、捨てるものにはコストをかけたくないというのが本音で、より安価で、確実に処理できることが重視されています。
その点、微生物を使った処理方法はローコストです。共同研究している企業の試算によると、薬品と紫外線を使う方法に比べて半分くらいコストを削減できるそうです。長年の研究の結果、すでに実用化できるところまで技術は完成していますから、あとは導入する事業所が現れてくれれば、実用化に向けてはずみがつくでしょう。
実用段階に至るまでの長い道のり
私が研究を始めたころ、ジオキサン分解菌はまだ発見されていませんでしたから、その菌がどこにいるのか、そもそも菌は本当に存在しているかもわからないところからのスタートでした。とにかく手当たり次第に水や土を採取してきて、その中にいる微生物をシャーレの中で培養。ジオキサンを分解する能力があるかを検証していきました。
この段階はゼロかイチかの世界なので、ほとんど博打みたいなものです。外れることがほとんどですが、この微生物が発見できないことには前には進めませんから、気の遠くなるような仕事をコツコツ続けるしかないという、まさに入り口が大変な研究です。そんな苦労の末にジオキサン分解菌を発見することができました。
次は、この菌の特徴を調べていくことになります。分解力はどれくらいなのか、温度に対してどんな反応をするのか、こうした菌の科学的特性を明らかにしていきました。もしこの菌が生物に有害な毒素を作り出す性質ももっているとしたら、ジオキサンを分解できても実用化することはできません。今は遺伝子解析の技術が格段に進歩し、遺伝子を見れば毒素を作り出すかどうかある程度判別できますから、遺伝子解析を行い、安全性も確かめました。
そのなかでおもしろい特徴がいろいろみつかり、いよいよ実用化の糸口が見え始めたのです。現在は、企業と共同で実用化を目指していて、十分な分解力を発揮できるだけの量や活性が、水中のジオキサン分解菌にあるかどうかを評価するツールを研究しているところです。
![](/rnet/include/gakumon/kiji/l1110/images/K00415.jpg)
地道な研究の末に新たな菌を発見した清和成教授
東南アジアやアフリカの人が安全な水を飲めるようにする研究
ジオキサンの研究では微生物の力をいい方向に利用しましたが、川や湖、海など自然界の水環境に生息する微生物は、人間にとって有害なケースもあります。東南アジアやアフリカでは、上下水道の整備が万全ではなく、病原性のある微生物が生息する水を生活に使わざるを得ない実情があります。こうした地域の水の安全性を確かめるのも、水環境を考えるうえでは欠かせないテーマです。
私の研究のフィールドは2つ。その一つネパールの首都カトマンズでは山梨大学の皆さんと井戸水を調べているのですが、やはり衛生的には劣悪です。日本人なら一発でお腹を壊してしまうレベルで、現地の人でもちょっと弱っていたり、体力のない子どもだったりすると下痢になってしまいます。ネパールにおける5歳以下の死因の第1位は下痢による脱水症状ですから、一刻も早く改善しなければなりません。
地下水の汚染は、ごみの投棄や下水の垂れ流しなど、現地の人が適切に水を処理していないことも原因の一つです。これから調査を進めるなかで、汚染源や汚染のされ方を特定し、これ以上水が汚染されないように現地の人たちの意識改革を促すことも重要です。
もう一つのフィールドはアフリカ大陸西部に位置するガーナです。熱帯の川には、水に触れるだけで感染し、重篤な感染症を引き起こす住血吸虫という寄生虫がよく生息しています。住血吸虫は、貝に寄生することがわかっているので、その貝を駆除すれば感染のリスクを下げられるのですが、小さい貝ですから川の中からすべて取り除いて駆除するのは無理がありますし、感染力が強いのでとても危険な作業になります。
そこで活躍するのが遺伝子解析です。糞や剥がれ落ちた細胞など、生物が生きている環境には必ずその痕跡が残っています。水の中にもその痕跡が蓄積しているはずで、その痕跡から遺伝子情報を読み取れれば、そこにどんな種類の生き物が生息しているかを推測することができます。わざわざ危険を冒して川の中を探さなくても、バケツで水をザバッと汲んでくるだけで危険な場所が割り出せるわけです。医学部寄生虫学教室の皆さんと共にこの技術を確立し、住血吸虫の駆除を進めるとともに、安全性マップを作って現地の人に情報提供することを目指しています。
全国のオススメの学校
-
読売理工医療福祉専門学校(建築学科)読売新聞社が創設した本校は、テレビ、IT、電気電子、建築、臨床工学、介護福祉と幅広い分野が学べる各省庁の養成・認定校です。2020年4月、後楽園の新キャンパスに移転。最新の設備を揃えた施設で学べます。専門学校 / 東京
-
修成建設専門学校(ガーデンデザイン学科)建築、デジタルデザイン、空間デザイン、土木工学、ガーデンデザインなど多彩な学科を設置する総合建設専門学校!企業×修成の実践授業や企業説明会など業界と連携し、一人ひとりの夢を応援します。専門学校 / 大阪
-
大妻女子大学(環境情報学専攻)在学中はもちろん、社会に出てからも、スキル向上のために「学び続けることのできる女性」、時代の変化やさまざまなライフイベントにも柔軟に対応しながら「働き続けることのできる女性」を育成します。私立大学 / 東京
-
多摩美術大学(建築・環境デザイン学科)日々進化するAI時代を先行くために必要な、ゼロからイチの価値を生み出せる「創造的な力」をもった人材を育成します。多様性を重視した入試方式も拡充し、総合大学との併願も可能です。私立大学 / 東京
-
大同大学(建築学部)産業界のニーズに即した実学教育で、新しい「ものづくり文化」を築くことのできる人を育成するカリキュラム。2021年春に誕生した新キャンパスでは、新時代の学びが始まっています。※2024年4月建築学部 新設私立大学 / 愛知
-
宇都宮日建工科専門学校(建築設計科)日本最大の「建築士養成校」日建グループ!入学者のほとんどが初めて建築・インテリアを学びます。初心者でもわかりやすい安心の授業を展開し、建築・インテリアのスペシャリストを目指します!専門学校 / 栃木
-
安田女子大学(建築学科)総合大学ならではの学修で、幅広い知見と教養、知識、応用力を身につけた女性を育成します。2025年4月「理工学部(生物科学科、情報科学科、建築学科)」「教育学部幼児教育学科」を開設します。私立大学 / 広島
-
大阪産業大学(建築・環境デザイン学部)「情報デザイン学部」「建築・環境デザイン学部」「システム工学部」の3学部を設置予定。※現行の「工学部」「デザイン工学部」を改編。今まで以上に幅広く学びに向き合うことで社会に貢献できる人材を育成します。私立大学 / 大阪
-
拓殖大学(電子システム工学科)明治の頃より世界を志向してきた拓殖大学には、国際社会に貢献しうる人材を育成する「志」があります。留学制度の充実や15の言語科目の設置など、国際大学のパイオニアとしてグローバルな環境で学びを展開します。私立大学 / 東京
-
八戸工業大学(建築・土木工学コース)「工学」と「デザイン」の力で地域課題解決を目指す。社会と連携した実践教育。「よき技術はよき人格から生まれる」という理念のもと、学生の主体性を引き出しながら人間力豊かな技術者を育てます。私立大学 / 青森
環境工学とはどんな学問?
環境工学とはどんな学問?
環境工学と他の学問とのかかわり
環境工学では何をどのように学ぶか
環境工学はこんな人に向いている
環境工学を学んだ後の進路と今後の展望
環境工学の先生に聞く
環境工学ではこんな研究をしています
環境工学のここが面白い
もっと先生たちに聞いてみよう
![Photo](/school/9002042825/images/image_3963376_s.jpg)
農業、電子・機械部品、食品、商社など幅広い分野が目指せます
徳島文理大学 徳島文理大学 理工学部 ナノ物質工学科
梶山 博司教授
![Photo](/school/9002042479/images/image_3963150_s.jpg)
都市に緑を増やして人々が住みやすい環境を創り出す先生
東京都市大学 環境学部環境創生学科
飯島 健太郎 教授
![Photo](/school/9002042535/images/image_3944798_s.jpg)
社会の安心・安全を守る次世代音響技術を開発する先生
日本大学 理工学部電気工学科
大隅 歩 准教授
環境工学の学生に聞く
もっと在校生たちに聞いてみよう
![Photo](/school/9002042565/images/image_3880405_s.jpg)
オンライン授業を経て対面授業に意欲と手応え。実験が楽しみに
東北工業大学 工学部 環境応用化学課程(旧:環境応用化学科)
高橋 紗瑛さん
![Photo](/school/9002046428/images/image_3956559_s.jpg)
大好きな自然に触れられる2年間。将来に向けて知識が深まります
東京環境工科専門学校 自然環境保全学科 野生動物保護管理コース
本多 智咲さん
![Photo](/school/9002042012/images/image_4070961_s.jpg)
たくさんの人と関わりながら環境について研究する毎日が楽しい!
大阪産業大学 建築・環境デザイン学部※2025年4月開設予定 現:デザイン工学部 環境理工学科
西岡 良晏さん
もっと卒業生たちに聞いてみよう
![Photo](/school/9002049203/images/image_3951195_s.jpg)
古民家リフォームで「想像」を「創造」に。お客様の想いを形にできる仕事がしたい
東北職業能力開発大学校
専門課程 住居環境科卒
![Photo](/school/9002042610/images/image_3899091_s.jpg)
人々の暮らしに欠かせない建物やインフラ設備を造っています
愛知工業大学
工学部 土木工学科 土木工学専攻 卒 ※2024年4月 土木工学科から社会基盤学科に名称変更
![Photo](/school/9002046209/images/image_3918575_s.jpg)
人を動かし、地図に残るような大きな仕事にどんどん挑戦していきたいです
岡山科学技術専門学校
測量環境工学科 卒