ユニークな特徴や機能を持った昆虫・動植物を徹底的に解析し、画期的な製品を開発
桑の葉の秘密を生かした血糖値の上がらない和菓子
絹の原料となる繭はカイコという昆虫が作り出すものです。そのカイコは桑の葉をモリモリ食べて成長します。カイコにとって桑はごちそうですが、ほかに桑の葉を主食にしている虫はいません。なぜでしょうか。私は桑の葉にはほかの虫には毒となる物質が含まれているのではないかと考えました。調べてみると、実際、血糖値の上昇を抑えるデオキシノジリマイシンという物質が含まれていました。糖分は重要なエネルギー源ですから、食べても食べても血糖値が上がらないのでは見向きもされないはずです。では、カイコはなんでそんなものを食べられるのか。それはカイコだけがデオキシノジリマイシンを消化する酵素をもっているからなのです。
血糖値が上がらないと聞けば、年中食べすぎの人間にとっては薬も同然です。実際、桑の葉の成分を混ぜた青汁が販売されていますが、私はもう一歩踏み込んで考えました。これを私の大好物の和菓子に練りこんだらどうだろうと。そこでさらに実験を重ねたところ、桑の成分を混ぜた和菓子を食べた人は、1時間たっても血糖値の上昇が穏やかで、そこからゆるやかに元に戻っていたのです。甘いものを食べると通常は血糖値が乱高下して、糖尿病のリスクを高めます。しかし、これならそれを防いで安心して和菓子を楽しめるようになるのです。
大事なのはここからです。和菓子にする以上、おいしくなくてはいけません。見た目の色合いも大切ですし、和菓子本来の味をじゃまするものであってもいけません。私は1000品種以上ある桑をしらみつぶしに探し、独自の改良も加えて、おいしい桑の葉の品種、栽培法、加工法にたどり着きました。それが私たちの「食用桑」です。そして、老舗の和菓子屋さんとタイアップして製品化に漕ぎ着きました。桑の葉シリーズはすでに5種類販売されていて、静かなブームを呼んでいます。
桑の葉の生産に当たっては農家と提携して挿し木で栽培してもらいました。農家にとっても桑は育てやすい植物です。耕作放棄地でも育ちますし、虫がつかないので農薬の散布もいりません。しかも私の開発した栽培法・製法で作って貰えば、通常の4倍の値段で和菓子屋さんに買い取ってもらえる。環境・社会・経済そして消費者と生産者を助けることが農学の大切な役目の一つですから、その点でも大成功のプロジェクトでした。

シルクを原料にした基礎化粧品。日焼けを防止して保湿効果も高いと評価が集まっている
自然を真似るバイオミミクリー、自然を活かすバイオユーズ
これはほんの一例で、研究室では、植物や昆虫などに学ぶ「ものづくり」に関する研究を数多く進めています。中でも注目されているのが、生物の特徴を真似て暮らしに役立つ製品を作るバイオミミクリー(バイオミメティクス)と呼ばれる分野です。タマムシやクジャクの羽の構造を真似て塗料の要らない自ら玉虫色に発色する金属加工法や、蚊の口を真似た痛みを感じにくい注射針などを開発しています。
シルクの研究にも力を入れています。血液もそうですが、シルクも人工では作れません。そこで、自然の素材をそのまま利用するバイオユーズというアイデアも必要なのです。繭は、幼虫から蛹、蛹から成虫へと変化するカイコにとって最もデリケートな時期を、外界の刺激から守るバリアとして機能しています。遺伝子に影響を与える紫外線をほとんどカットするほか、細菌の増殖を抑えこむ静菌作用や脂分を吸着する機能ももっています。私たちはそのすばらしい機能に着目してシルクを原料にした化粧品やサプリメントの開発にも成功しており、多くの反響が届いています。
全国のオススメの学校
-
九州大学(農学部)国公立大学 / 福岡
-
広島修道大学(生物科学科(仮称))VISION2024として「開拓者精神」「挑戦」「創造」を掲げ、2024年度から全学的な新カリキュラムを始動。実践力が身につく学びを提供し、地域や世界で活躍できる専門知識・人間性を備えた人材育成により力を注ぎます。私立大学 / 広島
-
長浜バイオ大学(アニマルバイオサイエンス学科)フロンティアバイオサイエンス学科、バイオデータサイエンス学科、アニマルバイオサイエンス学科、臨床検査学コースを設置するバイオサイエンスの総合大学。追究したい学びにどっぷりつかる環境が整っています。私立大学 / 滋賀
-
広島県立農業技術大学校(肉用牛コース)専門学校 / 広島
-
広島女学院大学(管理栄養学科)多様な価値観の中で、輝く私になるために。ぶれない"個"を備え、社会をしなやかに生きるために。4年間を通じて一人ひとりの学生が、さまざまな興味から行動力を身につけ、社会で「強み」を持てる人材を育みます。私立大学 / 広島
-
京都先端科学大学(バイオ環境学部)激動する社会に向かって自らを磨き、世界で活躍できる人財の輩出を目指しています。私立大学 / 京都
-
町田調理師専門学校(調理師科)徹底した実践重視のカリキュラムで、料理人としての感性をも備えたプロを育成。白衣の着方や包丁操作といった基本から段階を踏んで指導するから、料理をしたことがない初心者でも全く問題ありません。専門学校 / 東京
-
高知県立農業大学校(園芸学科)専門学校 / 高知
-
長野県林業大学校(林学科)専門学校 / 長野
-
専門学校 つくば自動車大学校(農業機械整備士科)県内最大級・最新設備を有し、自動車整備のスペシャリストを育成する単科校です。豊富な実習時間で高い技術力を身に付け、徹底的な検定対策授業で自動車整備関連の国家資格の全員合格を目指します。専門学校 / 茨城
農学とはどんな学問?
農学とはどんな学問?
農学と他の学問とのかかわり
農学では何をどのように学ぶか
農学はこんな人に向いている
農学を学んだ後の進路と今後の展望
農学の先生に聞く
農学ではこんな研究をしています
農学のここが面白い
もっと先生たちに聞いてみよう

お米の澱粉を研究し、加工品の販売普及まで行っている先生
秋田県立大学 生物資源科学部生物生産科学科
藤田 直子教授

さまざまな再生可能エネルギーの活用法を教えてくれる先生
酪農学園大学 農食環境学群農環境情報学類
石川 志保先生

健康な暮らしや豊かな食生活のために、食品を研究する先生
東京薬科大学 生命科学部応用生命科学科
熊澤 義之教授
農学の学生に聞く
もっと在校生たちに聞いてみよう

目標は野菜生産の現場で祖父のような熟練の技術者になること
テクノ・ホルティ園芸専門学校 野菜生産コース
島村 拓実さん

夢は農業法人の立ち上げ!大規模で効率的なスマート農業に挑戦!
東北農林専門職大学 農林業経営学部・農業経営学科
山田 開晴さん

植物が好きだという気持ちが1番大事。知識がなくても挑戦できます!
テクノ・ホルティ園芸専門学校 グリーンコーディネートコース
山中 萌生さん
もっと卒業生たちに聞いてみよう

植物は人にとって身近なもの、癒しを与える存在に魅せられたのが原点です。
テクノ・ホルティ園芸専門学校
花と緑の生産・流通コース(2019年4月 グリーンコーディネートコースに名称変更)

学生時代、野菜づくりの授業を通して野菜の味に感動!そしてこの道を志しました。
テクノ・ホルティ園芸専門学校
園芸療法・福祉コース(2019年4月 野菜生産コースに名称変更)

大学での経験や身に付けた畜産の専門知識が今の仕事に大きく役立っています!
酪農学園大学
農食環境学群 循環農学類 卒