鳥類や哺乳類など、生物の形態は種によってさまざま。私が取り組んでいるのは、その生物の体ができていく過程で大切な働きをする、「シグナル伝達経路」についての研究です。例えば、実験によく使われてきたのがニワトリの卵。殻に穴をあけてシグナル伝達を阻害する操作をし、胚にどのような変化がおこるかを見ることによって、阻害した遺伝子がどのような働きをしているかを確かめることができます。
こうした発生生物学の研究は、近年脚光を浴びている「再生医療」の土台になっています。シグナル伝達は生物の発生に重要であるだけでなく、がんをはじめとしたいくつかの疾患に関係していることもわかっているんですよ。生き物の形態形成の謎に迫ると同時に、がんの治療薬開発につながることを目指して研究を続けています。
川嶋先生が担当する授業は、1・2年次の生物系の講義・実習。薬学系の大学入試には必ずしも生物の履修は必要ではなく、大学に入ってから学ぶケースも多いのだそう。川嶋先生は、薬学の基礎となる生物学に苦手意識を持つことがないよう、動画などを多く用いた授業を行っています。2年次からは実習がスタートし、研究室所属へと繋がっていきます。「研究室では学生とディスカッションする機会も多いです。受け身でなく『どうしてこうなったんだろう』と考える研究マインドを持った薬剤師を育てていきたいです」と川嶋先生は話します。
薬科大学は皆さんの想像以上に多様な学問領域を含み、進路も多彩。薬局で働く、創薬に携わる、大学院で研究を行うなど、様々な分野で活躍を目指せます。薬に興味のあるみなさん、ぜひ一緒に勉強・研究しましょう。
広島大学総合科学部卒業。広島大学大学院生物圏科学研究科博士課程後期修了。博士(学術)。広島大学歯学部口腔生化学講座、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターを経て、現職。学部入学の際は文系からスタート。細胞生物学の授業に興味をひかれ、「トカゲのシッポはなぜ切れても再生するんだろう」と疑問を持ったことをきっかけに2年次より理系コースを選択した。