精神看護学領域を専門にしており、現在「オープンダイアローグ」の研究に取り組んでいます。「オープンダイアローグ」とは、フィンランド発祥の“開かれた対話”による精神科医療における治療法のことです。精神的な不調を抱える人を中心に、その人を支えている家族や関係者、医師や看護師などの専門家が集まり、分け隔てなく全員で“対話”します。精神疾患というだけで言いたいことを伝える機会をもてず、自分の生きたい人生を薬で押さえられているのでは根本的な改善には繋がりません。精神的な不調を抱える人を尊重しながら、本当に話したいことを専門家も交えて聴き、その人がどう生きたいのかを一緒に探っていくこの手法は日本でも注目されてきており、精神疾患の有無にかかわらず職場などに取り入れることも有効だと考えています。
“看護に正解はない”ことを大切にし、学生の考え方や言葉遣い、仕草を尊重するという笠井先生。「特に精神科では、患者さんに対して自分自身を道具として使い、発した言葉や表情・仕草によって患者さんは癒されていきます。その方法は皆が同じでなくてもいいのです。学生を尊重し、意見を聞きながら、それぞれが道具として患者さんへどんなことを提供できるかを演習を通して考え、それをもって精神看護学実習に臨みます」。実習先で学生が患者さんとのかかわりで困った際はプロセスレコードで振り返り、まずは自分自身を見つめるという。
看護師の仕事は自分自身を見つめることから始まります。自分に向き合わなければ、患者さんと向き合えないからです。気持ちに寄り添うために患者さんの話を聴き、それを受け止めていける看護師になってください。
専門:精神看護学
略歴:大学にて看護師、保健師、養護教諭1種取得、大学院にて看護学修士を取得後、大学病院精神科看護師を経て、2009年西武文理大学看護学部精神看護学領域の教員となり、現在に至る。