研究テーマの一つは、「地域産業としての木造建築をサポートする」ことです。日本の木材自給率40%のうち、建築用は約20%。かつては90%を超えていた林業の再生をサポートし、木造に携わる製材業、流通業、職人などのプレーヤーをチームとしてまとめる役割が建築士に求められています。個人住宅から中規模建築まで、現場に応じたコミュニケーションを図れる能力を身につけた建築士を育てることが大きな目的です。また、二つめのテーマは「既存建物の利活用」。リノベーションでは現況を把握し、断熱性能・耐震性能などを見極める技術が必要ですが、これまでの建築教育では見過ごされてきた分野であるため、技術者が圧倒的に不足しています。再生利用についても重点的に伝え、中古ニーズの高まりに対応できる技術者を送り出したいと考えています。
古川先生が最も大切にしているのは「建築って楽しい」という気持ち。山林へ行って木材の伐採現場や製材所を見学したり建築現場に足を運んだり、「触れて感じる体験」が多く盛り込まれています。「まずは自分も作りたい!というモチベーションを高めてほしいんです」と古川先生。模型を作る授業では自分の手でぐしゃっと潰し、どんな構造なら潰れにくいかを確かめるところまで経験。徐々に小屋など大きなものにトライし2年次では木造住宅の設計に着手します。また、構造計算などもみっちりサポートし資格取得の指導にも力を入れています。
2025年の建築基準法改正を受け、「木造建築に強い建築士」が今、強く求められています。まずは建築の面白さと幅広さを知ってもらい、どの分野に進むか未来の航海図を描くお手伝いをしたいと思っています。
1985年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業、1988年筑波大学院芸術学系デザイン専攻建築コース修了。設計事務所や工務店などを経て、1998年アトリエフルカワ一級建築士事務所設立。講演会活動も多数行い、林業の再生や国産材建築の品質向上にも取り組んでいる。武蔵野美術大学や東京理科大学で教鞭をとり、2025年からは本学の専任に。カリキュラム作成の中心を担う。