先人たちが築いてきた日本料理の伝統を守りながら、時代にあった料理と技術を教えています。基本技術はもちろんのこと、特に大切にしているのは学生たちの心の成長です。挨拶や礼儀、人を思いやる気持ちなど、こうした料理人の原点をしっかりと身につけた上で、現場に送り出したいと常に思っています。私自身、日本料理の道に進んで本当によかったと実感します。母国の料理であることから、まず言葉の壁がありません。さらに四季があり、海に囲まれていて食材も、地域ごとの特色も豊か。仲間や先輩、師匠との出会いにも恵まれ、一料理人として充実したキャリアを歩むことができました。でも、ひと握りの人にしか到達できない「一流」といわれる域に達するには、まだまだ。だからこそ、私もこの高みをめざして、今も直向きに自己研鑽を重ねています。
凛とした空気が張り詰めた実習室が、実習が終わるといつもの賑やかさを取り戻す。そんなメリハリある実習が、今井先生が担当する「日本料理実習」です。先生のデモンストレーションに注ぐ学生たちの眼差しは、真剣そのもの。実習では道具の使い方や手入れの仕方をはじめ、基本技術の「切る」「焼く」「煮る」「揚げる」「蒸す」のメニューを軸に学びます。特に、一人ひとりに合った指導を実現しているのは、少人数制のodaならではといえるでしょう。「学生たちに教えながら、私も学ぶことばかり」と、今井先生は笑顔で語ってくれました。
しっかり学び、吸収できるまで頑張る。時には厳しく、時には冗談を言い合いながら楽しく授業をしています。最初は全く料理が出来なかった学生が、卒業する頃にはすっかり「料理人の顔」に。それが一番の喜びですね。
高校時代は400mハードルとハイジャンプの陸上競技選手として活躍。旅館の調理場でのアルバイトを機に料理人を志す。調理師学校卒業後、京懐石「華懐石さくら」(京都・東京)で修業。日本料理店「料理工房 群来」(東京)等を経て現職。テレビ番組・CMへの出演も多数。