ナマコ、フカヒレ、魚の浮袋など、中国料理にめずらしい食材がよく登場する理由を知っていますか。諸説ありますが、長い歴史の中で不老長寿に効果がある食べ物を求められた人たちが、あらゆるものを食材として研究してきたから。また、その調理技法が多様である理由は、製薬のために試行錯誤してきた結果であると言われています。実は、優れた料理人になるためには、料理の知識が欠かせません。学生のみなさんには、先に述べたような料理の文化のほか、料理の理論をしっかり学んでいただきたいです。料理のメカニズムをきちんと理解していれば、自分の料理がなぜ失敗したか、先輩の料理がなぜおいしいのか、理由を分析できるはず。自分や他人の料理から学び、それを自分の力に変えていくスキルを、この学科で身につけていただきたいと思います。
矢尾板先生の実習は、“言葉で表現する力”や“考える力”をきたえる点が特徴。たとえば、学生たちは実習後にお互いの料理を評価し合います。ポイントは、「どうおいしいか」「何がおいしくないか」を具体的に言葉にすること。そうすることで、料理を理論的に分析する力を養います。そして、評価を受けた学生は、そのように評価された理由と、次回はどうするべきかを考えます。このような訓練を重ねて、料理でPDCAサイクルを行う習慣が身につくようにうながしています。※PDCA…計画し、実行し、結果をふり返り、改善点を探すこと。
料理人とは、自分の哲学を料理で表現して、お客さまに問う職業。時間と手間をかけて作った料理が喜ばれたときの感動は、かけがえのないものです。そんな世界に憧れる気持ちがあれば、迷わず飛び込んできてください。
専門:中国料理。略歴:辻調理師専門学校卒業後、同校の先生に。1999年にホテル「マンダリンオリエンタル香港」にて実地研修を受ける。出版物:『おいしいお茶の時間―紅茶・日本茶・中国茶・コーヒー』(2017年/NHK出版/共著)。テレビ番組:NHK「きょうの料理」、同「まる得マガジン おいしい中国茶を楽しむ」。CS放送「料理のり」、同「料理大学」。商品開発協力:パナソニックオーブンレンジ「ビストロ」レシピブック。