私が研究しているテーマは、地震などの災害時に、古くなった既設コンクリート構造物の安全性を見極める技術です。北海道のように気温が0度をまたいで変化する土地では、凍害という現象によるコンクリートの劣化が深刻です。今は高度経済成長期に建てられた構造物を更新していかなければならない時代で、古くなり取り壊しが決定している橋が道内にも多くあります。大学の実験室では、数十年かかって進行するコンクリートの劣化を1年程度で再現し、劣化させたコンクリートに力をかけて壊します。古い構造物の安全性に関する判断基準がこの研究ではっきりとわかるようになれば、維持・管理に無駄なお金を使うこともなくなり、社会にとって大きなメリットになるのです。
担当科目は地震工学や構造力学、構造解析学。実際の構造物がどれくらいの力で壊れるか、力が加わる場所と破壊する位置の関係などを、計算によって導き出す技術を学びます。授業では、学生たちに手を動かしてもらうことを徹底しているとのこと。資料にあらかじめ空欄を作っておくことで、話を聞きっぱなしにせず、実際に計算をしながら授業を受けることができます。ゼミでは、学生と一緒に道内の撤去が決定した橋など、研究対象を実際に見学して理解をさらに深めていきます。
コンクリート構造工学は、対象の物理的な大きさはもちろん、社会的な影響も大きい学問です。自然災害の多い昨今、防災の観点で携わることで社会に大きく貢献できる、とてもやりがいのある学問ですよ。
北海道大学大学院 工学院北方圏環境政策工学専攻 博士後期課程修了/学生時代に土木の分野を学び、研究の面白さに目覚めたのがこの世界に進んだきっかけ。準備作業を経ての実験、その結果から納得できる結論を導くというプロセスに、楽しさを感じるそう。趣味はマラソンで、自宅のランニングマシンでテレビを見ながら無心で走ることが気分転換になるという。長い時には10kmもの距離を走るそう。