東アジアにおける農業の経営戦略について研究し、その違いや類似点などを明らかにしています。例えば有機農産物の流通スタイル。スーパーでも普通に売っている韓国に対し、日本では会員制の宅配が多くなっています。隣り合う両国で、なぜこんな違いが生まれたのでしょう。かつて食の信頼を揺るがす事件があった韓国では、安全な有機農産物へのニーズが高く、小売業者が戦略的に販売を進めました。一方、有機よりも国産品が好まれる日本では、割高な有機農産物を販売するため、意識の高いユーザーを会員として囲い込み、ブランド化していく必要があったと考えられます。このように小売の戦略、消費者の意識など、国際比較により初めて見えてくる問題も少なくありません。海外を知ることは、私たち自身の生活や経済を見つめ直すことにもつながるのです。
講義や実習などでは、なぜ学ぶ必要があるのか、学んだことをどこに活かせるのか、学生が自身に問い続け明確にできるよう、日々時事的な事柄や学生が興味を持ちそうな話題を積極的に組み込んでいます。また、国際化時代における食と農に関する市場動向の分析、経営学理論の学習、フィールドリサーチを通じて自らが課題を発見し、その解決策を考えます。フィールドでは実務者との関わりや現場のリアルな声に触れる機会があるため、個々の問題意識を高めるだけでなく、社会人として求められる礼儀作法の習得にも役立ちます。
教室やテキストでの学習も大切ですが、現地に行って自分の目で確かめ、感じたことは一生忘れない学びになります。まずは、身近な場所で起きている現象に興味を持つこと、疑問を持つところから始めてみましょう。
慶北大学校卒業、東京農業大学大学院博士後期課程を修了。農林水産省農林水産政策研究所にて日本学術振興会特別研究員、農政調査委員会専門調査員を経て現職。博士(国際バイオビジネス学)。