皆さんはMAXI(マキシ)を知っていますか? これは世界最大級の広視野X線カメラで、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されており、天体が発するX線を観測しています。私の研究室ではISSで新天体を発見するためのシステムを開発し、それを使って他大学や世界の宇宙研究機関と連携しながら、銀河系の隅々まで観測。2009年からこれまでの間に、14のブラックホールを発見し、この期間においては世界で1番の実績を上げています。それらの天体の特徴を詳しく調べることにより、相対性理論から期待されるブラックホールが存在する証拠をつかむことが私の研究テーマです。また同装置によって、ブラックホールが星を吸い込む瞬間やブラックホールが生まれる瞬間も捉えてきました。現在、中性子星同士の合体による重力波との同時検出を楽しみにしています。
光をも飲み込むブラックホールは肉眼では闇にしか見えません。しかし宇宙でもっとも輝いている天体の一つが、実はブラックホールです。太陽のような星からのガスがブラックホールに吸い込まれる際に何億度という高熱になり、X線領域の強烈な光を発するからです。しかし物理学の研究の面白さは、そのように壮大なスケールの分野だけではありません。飛行機がなぜ飛べるのか、空が青く夕焼けが赤いのはなぜかなど、身近なことや自然現象を例に挙げて授業を進めています。そうしたことをよく理解できるようになることも物理学の魅力です。
物理学を学ぶことは自然を学ぶことに他なりません。様々なことに興味をもち、その原理を学ぶと日常が格段と面白くなります。高校で数学や物理学をしっかり学んで基礎力を培うと、さらに楽しい学問の扉が開きます。
専門:宇宙物理学(X線天文学)
略歴:立命館大学理工学部数学物理学科卒業後、大阪大学大学院理学研究科物理学専攻博士後期課程修了。宇宙科学研究所中核的研究機構研究員、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、2003年より日本大学理工学部物理学科助手に就任、その後2013年より同学教授に就任。MAXIによる研究成果は、世界的にも高く評価されている。