私の研究対象は「音」です。と言っても、音楽のように楽しむための音ではなく、社会の安全に関わる次世代の応用音響技術を確立することを目指しています。その一つは災害時に粉塵や煙などで視界が悪くても、人々を適切な出口に誘導する「音声避難誘導システム」。現在は、実際の建築物に導入するためVRを用いたシミュレーションの段階に入っています。もう一つは人間の耳では聞き取れない音=超音波を使った「構造物内部欠陥の非接触非破壊超音波診断装置」の開発です。従来の超音波診断装置では、非接触での計測ができませんでしたが、本研究室では世界でも類を見ない超強力な空中超音波を放射できるデバイスの開発に成功。現在は実用化に向けて、欠陥の高精度画像化や現場での使用を想定した機器のポータブル化を目指した研究を進めています。
次世代の音響技術の研究を進めるには、基本的な電気工学の知識に加え、多様な知識を修得し、実験をトライ&エラーで繰り返す必要があります。「実験を通して不足している知識を自覚し、さらに学びを深めるという自己研鑽のサイクルが生まれてくるのが本研究室の特色」という大隅先生。実験装置の開発を通じて、部品加工や回路設計、ソフトウェアによる装置の制御などを経験する中で興味の対象を広げ、「社会に役立つ技術を開発したい」という思いを強める学生が多く、その進路は電機、自動車、情報通信、建設など多岐にわたります。
音響工学はこれからの社会に役立つ技術がたくさん眠っている学問領域です。未開拓な分野を自分の手で切り拓けるという楽しさもあります。柔軟な発想力を生かして、一緒に世界を驚かす応用音響技術を開発しましょう!
専門:音響工学
略歴:2006年、日本大学理工学部電気工学科卒業。2008年、同大学院理工学研究科電気工学専攻修了。2010年、日本大学理工学部電気工学科助手、2015年、同助教を経て、2020年、准教授に就任。博士(工学・日本大学)。2017年、日本音響学会粟屋潔学術奨励賞、2018年、日本非破壊検査協会学術奨励賞を受賞。著書に『音響工学キーワードブック』(コロナ社)、『音響学入門ペディア』(コロナ社) などがある。