液体や気体などの流体運動を支配する方程式をコンピュータで解いて、その結果を可視化することによって「流れ」を解析する学問が「計算流体力学」です。流体運動を支配するのは、ナビエ-ストークス方程式という非線形偏微分方程式で、コンピュータを使っても解くことが難しい方程式ですが、その解が表す「流れ」という非線形現象はとても美しく興味深いものです。水深2000メートル以上の超高圧環境の深海の海底から噴出する超高温の、液体と気体の中間のような超臨界状態の熱水の未知の流れや、水の流れによる浸食や堆積が生み出す地形のフラクタルパターンの再現、現実の3次元空間を飛び出して4次元空間での流れなど、流体のシミュレーションを利用したちょっと変わった面白い流れの解析に、日々ワクワクしながら取り組んでいます。
身近な事象から大規模な自然現象まで、さまざまな事に興味をもち、その先の世界を見てみたいという思いが、研究への原動力になるのだという小紫先生。指導していていると学生の豊かな個性と可能性を感じるそうです。ゼミではまず、微分方程式をコンピュータで計算する方法を学び、その後、各自でテーマを決めて流体計算に取り組みます。学生たちのテーマに向き合う姿勢や研究の進め方、興味をもつポイントや発想がさまざまで、得られる結果はそれぞれにおもしろいもの。ゼミを通じて新しい自分を発見し、各々の創造力が育まれていきます。
何ごともスピードが優先される時代ですが、「ゆっくり、じっくり考える」ことも大切です。そこで培われる思考力や創造力こそ現代科学に必要な要素であり、科学や文化の発展はそのような豊かな思考から生まれます。
専門:ナビエ・ストークス方程式の数値解析、コンピューターグラフィックスによる可視化、流体の数値シミュレーション
略歴:1998年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科数理・情報科学専攻博士前期課程修了、2002年、博士(理学)お茶の水女子大学。2004年、日本大学理工学部数学科専任講師。2012年より同准教授として活躍。2023年より現職。