政策の企画・立案をはじめ、国家間のやり取りを動かしているのが外務省です。たとえば外国との合意文書の作成であれば、署名式といった大舞台に臨む人はもちろん、そこに至るまでに粘り強く折衝を重ねる人、要となるところでサポートする人など、数多くの外務省職員が関わっています。こうした末に国と国の関係に新たなページが加わり、それが50年、100年と続いていく。そんな一つの「歴史」が刻まれる瞬間に立ち会い、携われるのが、この仕事の大きな醍醐味といえるでしょう。そうした一方で、とても重要な場面に遭遇することも多く、交渉事がその後の国のあり方に直接関わってくることもあるため、仕事で感じる責任と緊張はかなりのものです。
私たち外務省職員は、東京のほか、世界約150カ国にある在外公館(大使館・総領事館・政府代表部)に勤務し、現地の人々と幅広く関係を作ります。こうした人と人との信頼関係があるからこそ、人から情報をもらえたり、人にお願いをきいてもらえたりと、仕事をスムーズに進めることができるのです。これまでに中東・アフリカ・東南アジアで3カ国に赴任しましたが、それぞれで厳しい貧困の現実や、言論統制下に生きる人々の日常にふれてきました。それらにナイーブにショックを受けるだけでは務まらない職業ではあるものの、世界の現実から目をそらさず直視することが、目の前の仕事に流されがちな日々の中で、原点に立ち戻る機会となっています。
私は入省後、海外研修先のアメリカの大学院で平和学を2年間学び、修士号を取りました。この時に活きたのが、神田外語大学で磨いた英語運用能力です。特にライティングの授業で、英語で論文を執筆する力をつけたことは、大きな強みになりました。また、法哲学の教授のゼミ、「国際平和論」や「国際コミュニケーション論」の授業等を通じて、ただ一つの正解が無いような問いについて議論を重ねた経験も、創造的に物事に取り組み解決していくためのトレーニングになりました。いずれも今振り返ると、現在の仕事につながっていると感じています。皆さんも自身の可能性をより広げるために、大学では幅広い学びにぜひふれてください!
外務省 北米局 北米第一課 主査/英米語学科/2003年卒/民間企業を経て2005年外務省に入省。アメリカで在外研修後、在シリア、在南アフリカ、在フィリピンの各日本大使館に勤務。2014年に帰国後、アジア大洋州局地域政策課を経て現職。