私は埼玉県立草加南高校で英語教員をしています。教師になって一番難しいと思っていることは、「全員が、英語が好きな生徒ではない」、ということです。英語への興味も関心度も一人ひとり違いますから、同じ事を教えても反応がまるで違います。そんな生徒たちに英語の楽しさをどうわかってもらうか? どうやって興味を持ってもらうか? そうしたことを常に考えて授業をするようにしています。それまで英語が嫌いだと思っていた生徒が、いつのまにか英語で発言するようになっていたり、生徒に「わかった」と感じてもらえたりと、一人ひとりが成長していることを実感できた時は本当に嬉しいものです。
国際的なスポーツイベントで通訳のボランティアをやったり、教員になるためのサークルを立ち上げたりと、色々なことにチャレンジできた学生時代でした。中でも交換留学生として1年間アメリカに留学した事はとても良い思い出です。実は最初の3ヶ月はかなりきつかったのです。現地の授業では先生と学生とのやりとりがすごく早くて、討論にまったく参加できない。生活面でも自分のことを「留学生」として誰も特別扱いしてくれないので、「異邦人」をしみじみ感じました。3ヶ月過ぎたあたりからずいぶん慣れましたが、この留学の経験は、「自分の小ささ」を気付かせてくれるなど、私をかなり強くしてくれたと思います。
生徒たちは、英語をどうしても「受験のためのもの」と考えてしまいがちです。でも、英語は言葉でありコミュニケーションのためのツールです。英語を使いこなせれば人生がもっと楽しくなるし、もっと心が豊かになる。それを生徒一人ひとりにわかってもらうことが大切だと思っています。そのためにもまずは、自分の人間性を豊かにしなければいけません。生徒たちは自分の鏡のようなものなので、私が成長しなくては、生徒たちに良い影響は与えられない。最近特にそう考えるようになりました。もっと自分へのインプットを多くして、もっと自分に栄養を与えて、豊かな人間になれれば良いなと思っています。
埼玉県立草加南高等学校勤務/外国語学部英米語学科/2004年3月卒/アメリカへの留学をはじめ、まとまった時間がとりやすい学生時代にオーストラリアやコスタリカなど様々な国を訪れたという池上さん。「例えば、自分の常識と世界の常識は大きく違うということを実感したり。海外での経験は、今の自分の大切な部分を作ってくれています」。