放射線は1895年に発見されて約120年の歴史ですが、各種検査から治療まで、医療現場に欠かせないものです。私もその世界に魅力を感じて診療放射線技師の職に就き、臨床を重ねてきました。診療放射線技師は患者の体型や検査部位に応じて機器の放射線量を調整します。放射線の量が多いと画像は鮮明になりますが、被ばく線量が増えます。しかし、放射線の量を減らしすぎると画像が不鮮明で、肝心な病気を見逃してしまう恐れもある。そのバランスを見極めることが重要です。過去に国内外で医療被ばくが増えた時期があり、危機感を募らせた私は放射線の安全に係わるガイドライン等の作成に携わり、患者さんに安心して検査を受けて頂くことに注力してきました。検査機器の発展が目覚ましい分野ですが、そこには診療放射線技師の存在が欠かせないのです。
放射線計測は学生全員が大学で初めて学ぶ分野になる。そのため「まずは放射線の特徴を理解してもらいます。その上で、測定原理、実際の測定応用例など分かりやすく講義するように心がけています」と優しくおっしゃる坂本先生。実習では実際にX線装置等を用い、学生が患者役、技師役となって進めるのが特徴。「患者役を体験することで、実際に検査を受ける方の気持ちがわかります。状況をしっかり把握し、患者さんの不安や苦痛を少しでも取り除けるようにする姿勢をここで身につけて欲しいです。それがより良い検査に繋がるのです」。
最先端技術が装備された高性能・精密機器を取り扱いながら、検査に加えて治療にも関わる仕事なので、やりがいは十分。医療に興味がある方はもちろん、機械に興味を持つ学生など幅広いニーズに対応できる分野です。
山梨大学大学院先進医療科学専攻(医学部)博士課程卒。山梨大学医学部附属病院放射線部にて診療放射線技師長、副部長を務める。その後、順天堂大学へ。35年間の臨床経験で培った視点を学生に伝えている。日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師認定機構 理事長、日本放射線技術学会 理事、日本放射線技術学会関東支部 副支部長。