人の命や尊厳にも関わるトイレの改善に尽力しています
私が代表理事を務める日本トイレ研究所は、トイレを通して社会的課題を発見し、解決を目指して活動を続けています。いま特に注力しているのは「防災」「快便」「バリアフリー」という3つの活動。例えば防災でいうと、トイレは災害時に水や食料と並んで課題になります。食事を1日我慢できても排泄は我慢できません。対策を講じないと不衛生になって感染症拡大を招きますし、排泄を減らすために水分摂取を控えて脱水症状を招く人も出てきます。環境改善を目指して省庁や自治体、企業、研究者、市民などと連携しながら活動していますが、そうした取り組みによって人の意識が変わり、対策を講じる地域が増えていることにやりがいを感じています。
私がトイレに着目したのは、大学卒業後に就職した設計事務所で図面を引いているときのことでした。当時勤めていたのはマンション設計を中心に行う事務所でしたが、間取りのトレンドには力を入れるのに、トイレは毎回サンプル集からコピペすることの繰り返し。住居に欠かせないもので、家族の生活が凝縮される場といっても過言ではないのに、なぜ軽んじられるのだろう…。そうした思いが次第に膨らみ、「トイレを切り口に都市環境デザインを考えられないか」と考えるようになったのです。排泄とトイレの問題は医療、食品、教育、防災などの幅広い分野に関連しており、チャレンジしがいがあるテーマを見つけられたと思っています。
被災地への仮設トイレの支援や調査、啓発活動も実施
私がシステム工学部(現システム理工学部)に進学したのは、都市環境デザインを学びたいと考えたからでした。学部内には都市計画や心理学、建築学など、街づくりの専門性に関連する研究室が混在しており、枠をつくらない思考で「分野横断的に学べる環境」がありました。今になって振り返ってみれば、「排泄」「空間」「汚水処理」などトータルでトイレを考えるという発想は、大学時代に学んだ環境システムの考え方そのものです。複数分野が機能して成り立つ水洗トイレシステムへの俯瞰的な視点を培えたのは、特定の分野に捉われず学修・研究できる環境に身を置いていたからなのだと思います。
セミナーや出前授業など多様な活動を行っている
NPO法人日本トイレ研究所勤務/システム工学部(現・システム理工学部) 環境システム学科(2026年4月、 建築・環境課程へ改組予定)/1996年卒/芝浦工業大学卒業後、設計事務所を経て現職へ。現在は代表理事を務め、「トイレ」を通して社会をより良い方向へ変えていくことをコンセプトに活動中。トイレから環境、文化、教育、健康について考え、すべての人が安心してトイレを利用でき、共に暮らせる社会づくりを目指している。
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