日本語教師として活動してきました。その中で日本語学習者がつまづきやすい語彙学習に興味を持ち、その指導法を研究しています。例えば「家を出る」と「月が出る」。日本語を母語としない方はどちらを先に習得すると思いますか。前者のほうが早い傾向があります。複数の意味を持つ多義語は、こうした理解しやすい順に学んだほうが効率的に習得できます。一方で日本語教師の育成にも力を入れ、指導法を学ぶ以前に「知りたいという好奇心を持ってください」と伝えています。日本語教育の目的は単語や文法の暗記ではなく、日本語でコミュニケーションができるようになること。お互いに相手を「知りたい」という気持ちが会話を弾ませ、それが日本語の上達につながります。学習者への興味を持ち、楽しい日本語教育を実践できる教師をめざしてほしいです。
麻生先生の授業では「日本人にとって簡単な言葉が日本語学習者には難しいとわかった」という学生の感想が多いです。例えば、「右折してください」よりも「右に行ってください」の方が日本語学習者には理解しやすいことに気が付きます。日本語教育では学習者のレベルに配慮し平易な言葉や文法で話すことが求められます。それらを実践的に学ぶため、モデル会話を作成し、実演したスキット動画を作ることも。レベルに応じてどのような会話文やスピードがいいかなどを考えながら制作することで、やさしい日本語で指導できる力を身につけます。
日本語教育は単に言語を教えるものではなく、コミュニケーションを深め、互いの理解を深めていくためのもの。教育の場面だけでなく多文化共生に向けた問題解決など幅広い場面でその力をぜひ活かしてください。
専門:日本語教育
九州大学大学院比較社会文化学府 博士取得(比較社会文化)。韓国の又松大学校、九州大学大学院工学研究院、東亜大学で日本語教育を行い、2019年現職に着任。日本語教師は「食べること」も大事というのは麻生先生の持論。「食事は万国共通の話題で盛り上がります。世界中の国の料理を作ってみたり、エスニック料理店を巡ったりして「食」の話題をつくっておくと、日本語学習者と会話が弾みます」と話す。