なんとなく生きづらさがある、漠然とした葛藤がある人もいるかと思います。10代の頃の私もそんなひとり、その問題意識の根本を知るため海外に留学。言語が通じないとき、本当に伝えたいことは何なのか、思考を深めることで言語化できるようになりました。多民族、多文化がひしめく海外でコミュニケーションという学問があることを知り、自分とは違う人との関わり方についての学びを深めていきました。最近では、自分は『コミ障』で『コミュ力』がないという人が多いようですが、コミュニケーションは複数性なので、困難があるのは自分の問題ではなく関係性や環境によるのです。そして社交性=コミュ力でもありません。自分の中にあるアイデンティティを知ることが、コミュニケーションのはじまりで、その方法について研究しています。
『学生の発見からゼミをデザイン』することを大切にしている小笠原ゼミ。学生からの要望に応え、ラジオ番組を企画制作したり、ショートフィルムを制作して映画祭に出品するなどユニークな活動をしています。一見するとコミュニケーションとは関係ないように思えますが、メディアを駆使して、自分が伝えたいことを表現するのもコミュニケーションの基本といえるそうです。今後は、生きづらさを抱える子どもたちとの交流や若者の意識革命から、北海道の未来をつくるプロジェクトを予定しています。
自分ひとりの中にも多様性があります。家族、友だち、社会という環境に応じて発揮される個性も変わってきます。他者と関わるコミュニケーションを学ぶことで、自分を知り、自分を伝える方法も見つけられるでしょう。
専門:コミュニケーション学、臨床教育学
東京出身。米国バージニア大学大学院修士課程卒業。米国ノースウエスタン大学大学院博士課程修了。札幌大学着任後は臨床教育学、現在はバークリー音楽大学で作曲とジャズついて学びを深めている。一方、週5日は水泳をたしなむほど活動的。著書に『どこへ行っても恥をかかない 世界の「常識」図鑑』等がある。日本コミュニケーション学会、日本臨床教育学会、北海道臨床教育学会会員。