生物のからだには、異物が入るとそれを排除しようとする「免疫」という働きがあります。そんな生物の免疫について、「アワヨトウ」という聞きなれない名前の蛾の一種と、そこに卵を産む「寄生蜂」を使って研究をしています。アワヨトウのからだに異物である蜂の卵が入ったとき、なぜ免疫は働かないのか。その理由は、蜂が持つ「毒」と「共生ウイルス」にあるということが分かってきました。スズメバチが相手を攻撃する毒を持っているように、寄生蜂は、免疫のシステムを撹乱させる毒を持っているのです。そんな研究をベースに、さまざまな昆虫の飼育や実験を行い、その中で新種の蜂を発見したこともあります。また、観察や実験のために飼育している昆虫を、地域の小中学校や高校へ教材として提供したり、昆虫を使った出前授業をおこなったりしています。
ゼミ生の多くが、教員や幼保職志望のため、幼稚園から高校まで出向いて出前授業を行ったり、三重県立総合博物館等で、子どもを対象にしたイベントを企画・運営する機会を設け、経験を積んでいます。子どもにとっても小さな頃から虫に慣れるきっかけになり、最初は遠巻きに見ていた虫嫌いの子が、最後には「面白い」と近くで観察してくれることも。虫の生態、食物連鎖、虫は何が嫌いで、何をしたら弱ってしまうか。見て触れて、はじめて実感できる命の大切さを、学生にも感じてもらいながら教育・研究していけたらと思います。
子どもは時々、思わぬ質問を投げかけてきます。それに応えるのは想像以上に大変。大学では実験や観察をたくさん行い、失敗もする中で知識や技術を養い、教科書の1行から10のことを教えられる先生になってください。
専門:理科教育学 昆虫生理学
略歴:高校教員を13年間勤め、2001年名古屋大学大学院生命農学研究科へ進学し博士課程後期修了。2008年皇學館大学教育学部教育学科の准教授、2014年教授、2019年教育学部長、2023年から学長補佐に就任。蛾の一種のアワヨトウの幼虫に寄生する寄生蜂を使い、免疫のしくみについて研究。高校教科書の「免疫」の項目における血球の食作用の観察について、昆虫を用いた教材開発や各種講習会なども行う