幼稚園や保育所で働く保育者に必要なのは、子どもに対する保育の知識や技術だけではありません。私は、保育は園だけで完結するものではなく、家庭や社会に繋がるものだと考えています。ですから保育者には、子どもに対する保育だけでなく、社会や保護者の状況も視野に、広く保育を捉える力が必要です。例えば、送迎時の対話を通し、「子どもにどう接すればよいかわからない」「育児の相談をできる人が近くにいない」といった保護者の不安や悩みに保育者が気付き、適切に支援することで保護者の「子育て期」を前向きに変化させていくこともできます。学生は、授業や実習、ゼミに加え、KIDSセンターでのボランティア活動を通し経験を積み重ね、広い枠組みで保育を捉え、子どもの育ちに最善な保育の在り方を探求する姿勢が培われます。
地域に開放された「KIDSセンター」には、0~2歳児の親子が訪れます。学生たちはゼミなどで参加観察やイベントの企画運営を行い、親子と直接関わる経験をします。子どもの遊びをサポートしながら、保護者とコミュニケーションする中で子育ての実態についてヒアリングします。イベントの企画では、乳幼児期の育ちに必要な体験、家庭での親子の関わりが豊かになる内容を目指し丁寧に議論します。この議論を経て実施した"たき火"や"落ち葉プール"などの自然遊びは、社会の変化に伴い、なかなかできない新鮮な体験だと参加者に好評です。
乳幼児期は人生の基礎を培う重要な時期であると言われています。一人ひとりの幸せな生涯のために保育者ができることは何か。その答えを示してくれる最大の先生は、出会う子ども達、そして保護者の方々なのです。
専門:教育学
金城学院大学大学院人間生活学研究科人間発達学専攻(前期課程)修了。1989年より教諭として金城学院幼稚園に勤務。2012年より同大学講師を務め、現在は人間科学部准教授。
複雑化する社会の中で子どもたちが幸せに成長できるよう、保育者ができることは何か。保護者に対する子育ての支援策を提案する。2015年に開館した同大学の子育て支援施設「KIDSセンター」では運営委員を務め、実践的に子育てを支援を行っている。