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身体・精神の障がいによって日常生活に困難を抱える人に、生活スキルを向上させるための訓練(リハビリ)を提供するのが作業療法士の仕事。作業療法士が行うリハビリは理学療法士の行うリハビリとは区別され、“作業療法”と呼ばれています。この作業とは、食事・入浴・排泄のほか、料理・洗濯・掃除などの家事、スポーツやレクリエーション、手芸・工作・園芸・音楽など、日常で多く行われている動作・活動全般を指します。「理学療法士」が「立つ」「座る」など基本動作の維持・回復のための訓練を行うことと比較すると、「作業療法士」は患者さんの生活スタイルに合わせてより応用的な身体動作の訓練を行うという違いがあります。また、リハビリを通して心身ともにリラックスした状態をつくりだすのも作業療法士の役割になるため、作業療法は単純に動作を繰り返すようなものではなく、飽きずに楽しみながら行える娯楽性も大切になります。「何を楽しいと感じるか」は人によって違いますし、行えるリハビリは病状によっても変わってくるため、作業療法士は対象者に合わせたプログラムを考案する力が必要になります。
●代表的な作業
・生活(会話、食事、料理、掃除、洗濯、読書など)
・手工芸(折り紙、木工、革細工、陶芸、刺繍、編み物、ビーズ細工など)
・芸術(音楽、絵画、塗り絵、書道、詩、俳句、写真など)
・遊び(トランプ、将棋、囲碁、オセロ、パズル、麻雀、輪投げ、オリジナルゲームなど)
・スポーツ(体操、球技、ダンス、バランスボール、散歩など)
詳細
病院で働く作業療法士の主な仕事は、患者さんの回復段階に合わせて「急性期」「回復期」「維持期」の3つに分類ができます。
急性期
「急性期」とは、病気の発症や事故・手術後、数日から約1カ月の期間。この時期にいかに早くリハビリをスタートできるかが、のちの機能回復具合に影響を与えると言われています。急性期リハビリでメインになるのは、手足などを動かすことによって、「廃用症候群」を防ぐこと。廃用症候群とは、安静状態が長く続くことによって心身の機能が低下した状態を指し、病床で寝たきりでいることによって発症しやすいと言われています。そのため、作業療法士は理学療法士と協働し、まずは患者さんがベッドから起き上がれる状態を目指します。急性期はまだ全身管理が必要な時期であるので、医師や看護師と密に連携を取りながら、慎重にリハビリを進めていくことも重要になります。ベッドから離れられるようになったら、患者さんの状態に合わせて「食事」「排泄」の訓練へ。介助が必要な場合は、介助者への指導も行います。
回復期
急性期を経て、最も回復が見込まれる時期を「回復期」と呼びます。発症から1~2カ月後から半年ほどの間に、作業療法士は心身の機能の維持・回復に向けたリハビリを行います。その内容は、患者さんの状態によってさまざま。例えば手足に麻痺がある場合は、器具などを使って身体を動かす練習から始めることになりますし、基本的な動作ができるようになった患者さんには、退院後の生活を見すえて、食事・入浴・着替えなどより多くの生活動作を身につけられるような訓練を行っていきます。いずれにしても、大事なのは患者さんが「一人でできること」を増やすこと。まずは作業療法士がサポートしながら、段階を経て自力での遂行を目指していきます。
維持期
病気の発症から半年ほど経ち、回復のスピードがゆるやかになる時期が「維持期」です。全身状態も落ち着き、退院して外来通院をする患者さんも増えてくるこの時期のリハビリは、「生活の質の向上」がメイン。病状が安定するいっぽう、完治しない病や後遺症を抱えて生きていくことを受け入れなくてはいけない患者さんも中にはいるため、リハビリを通して「未来への希望」につながるような楽しみや生きがいをみつけてもらうことが、作業療法の大きな目的となります。また、日常の基本動作の練習に加え、一緒にものを作ったりレクリエーションをしたりと患者さん同士の交流も大切にしながら、社会に適応できるコミュニケーション力を養っていきます。とはいえ、ベッドの上で日中を過ごす人、車いすの人、片手・片足など一部に麻痺が残る人、自宅で療養する人、社会復帰を早急に目指す人…など、維持期における患者さんの状態はさまざま。日常生活で困っていること、今後どんな生活をしていきたいのかなど患者さんの声に耳を傾け、目標を設定し、一人ひとりに合わせたリハビリプログラムを考えることが重要になります。
患者さんに合わせて、道具を自作することも
リハビリ用の器具のほか、患者さんの日常生活の負担を少しでも減らせるような「自助具」と呼ばれる生活補助具を作るのも作業療法士の役割の一つ。例えば手先が不自由な人には食事がスムーズにできるような箸や食器など、患者さんが他人に助けを借りなくても自立して日常動作が行えるよう工夫がされたものを作ります。
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