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作業療法士が活躍できる職場は、「身体障がい領域」「老年期障がい領域」「精神障がい領域」「発達障がい領域」の4つに分類されます。中でも圧倒的に数が多いのが、「身体障がい領域」を扱う総合病院や整形外科病院、リハビリテーションセンターなどです。また、高齢化に伴って「老年期障がい領域」を扱う特別養護老人ホームや老人デイサービスセンター、訪問リハビリ分野での需要も増えていますし、「精神障がい領域」を扱う精神科病院、「発達障がい領域」を扱う小児病院や児童福祉施設、特別支援学校などもあります。
「どんな患者さんのために力を発揮したいか」によってフィットする職場は異なってきますし、リハビリの内容や目的も領域ごとに違いがありますので、まずはそれぞれの特徴を押さえておくことが大切です。
●身体障がい領域
・総合病院、大学病院、整形外科病院
・リハビリテーションセンター
・身体障がい者更生施設、身体障がい者福祉センター
・保健所、保健センター
ほか
病気や事故の後遺症で身体に麻痺が残った患者さんに対して、日常の動作に必要な筋力や関節の動きなどを回復させるための訓練を行います。道具を使って手や腕を動かしたり、手芸など手先を使う作業をしたり、ゲームや体操を通して筋力やバランス感覚を養ったり。利き手に障がいがある場合は反対の手で箸を持ったり文字を書いたりする練習をするなど、残された機能を最大限活用できるよう訓練することも大切です。
また、脳に損傷を受けたことで「高次脳機能障がい」を負った患者さんに対する作業療法も、身体障がい領域の一分野。「高次脳機能障がい」の患者さんは、記憶障がい(新しく物事を覚えられない、最近あったことを覚えていない)、注意障がい(注意力散漫、ぼーっとしている)、遂行機能障がい(物事を計画し実行に移すことができない)、社会的行動障がい(感情的になりやすい、やる気がない)などの症状により、日常生活に支障をきたすことが多くなります。そんな患者さんが少しでも負担なく暮らせるよう、障がいをカバーできる方法を考えたり、できることを増やせるよう訓練したりと、本人の状態に合わせたリハビリを行っていきます。
精神障がい領域
・精神科病院、メンタルクリニック
・精神科デイケア
・精神保健福祉センター、精神障がい者支援センター、
・精神障がい通所授産施設
ほか
精神疾患によって日常生活に支障をきたしている患者さんに、手工芸やスポーツ、レクリエーションなどの作業活動を通して、日常生活や社会生活への適応を促します。精神疾患によって生活のリズムが崩れると体力や意欲、活動に対する耐久力や持久力が低下し、人とかかわることや社会へ出ること、毎日の生活に必要な活動さえもうまく行えないようになります。日常生活を送ることが困難になると、自信や楽しみが失われ、よりいっそう日常生活・社会生活に適応しにくくなるという悪循環が生まれてしまうため、患者さんごとに達成できそうな目標を設定し、「目標を達成することで自信や生きがいを得ること」「人間関係を再構築すること」を目指します。また、長期の入院生活で身体の機能低下が見られる場合は身体機能の訓練を行うほか、退院後の生活を見すえた日常活動(料理・外出・買い物)や服薬管理方法の提案・練習も行っていきます。
老年期障がい領域
・認知症専門病院
・リハビリテーションセンター
・療養型医療施設、老人保健施設、在宅介護支援センター
・特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター
・訪問看護ステーション、訪問リハビリテーション
ほか
加齢に伴う身体機能や認知機能の低下、認知症、脳に損傷を受けたことが原因による「高次脳機能障がい」などが原因で、日常生活に困難さを抱える高齢者(65歳以上)を対象に作業療法を行います。高齢者の場合は機能が劇的に回復するということはないため、「今できていることを維持するための機能訓練」「将来低下していくと予想される機能への予防的なアプローチ」がリハビリの主な目的になります。例えば、病気や怪我などで身体を動かさない部分があると、使わない部分はどんどん機能が低下してしまい、最悪の場合寝たきりの状態に進行してしまうことも。そうならないよう体を動かすプログラムを日常的に取り入れるなど、高齢者の暮らしの質を保っていくのが作業療法士の役割になります。また、施設に入所している高齢者は変化の乏しい生活を送っていることも少なくないため、集団でレクリエーションや会話を楽しむ中で刺激を受け合い、活動性・自発性・コミュニケーション力を維持していくことが大切とされています。そのほか、認知症をわずらう患者さんに対しては精神的なケアも重要。認知症初期には本人にも「何かがおかしい」という感覚があるため、精神的に不安定になり、それが大きなストレスになることもあるのです。進行を食い止めることは難しいかもしれませんが、これまで日常的に行っていた作業や趣味などを作業療法として行うことで、患者さんを安心させ、精神の安定を図ります。
発達障がい領域
・小児病院
・発達障がい児(者)支援センター
・児童デイサービス、母子通園施設
・児童福祉施設、養護学校
・幼稚園、保育所
・保健所、保健センター
ほか
発達障がい領域では、自閉症、脳性麻痺、知的障がい、軽度発達障がいなどの子どもがリハビリ対象者。正常な発達段階を踏んでいる同年代の子どもと比べ、言葉や動作に遅れが出ており、集団や社会にうまく馴染めない子たちに作業療法を行います。運動機能や感覚に障がいがある子どもたちは、自らの身体や運動のイメージがもちにくく、周囲から有用な情報を得ることが苦手なため、姿勢を保つことや身体の使い方、物や道具の操作、物と人との関係性を構築することが難しいという特徴があります。作業療法では、子ども自身が自ら考えて遊び、最終的には成功体験を得られるような課題を提供し、身体や脳の発達を促していきます。また、食事・衣服の着脱・排泄・入浴・洗面など日常生活で困っていることを親にヒアリングし、「どうしたらできるようになるか?」を一緒に考え、トレーニングを行います。繰り返し訓練を行い、動作の獲得・習慣づけを図るほか、行動をサポートする道具や自助具を作製・導入することもあります。また、子どもが通う保育所・幼稚園・学校での生活を行いやすくするための環境整備や介助方法、家族から子どもへの接し方や声掛けのしかたをアドバイスするのも作業療法士の大切な役割です。
訪問リハビリテーション
通院が難しい患者さんの自宅へ訪問し、リハビリを行う場合もあります。患者さんは子どもから高齢者までさまざまで、上で紹介した4つの領域のいずれかに該当します。日常生活で不便・不安を感じていることをヒアリングしたうえで、患者さんごとに必要な生活動作の訓練やアドバイス、介助者への指導を行うのが作業療法士の仕事。自宅は病院や施設のようにバリアフリー設計になっているとは限らないため、手すりの位置や浴室の形状など今の家で暮らしにくい部分がないかどうかチェックし、改善の提案をすることも作業療法士が担うことのできる役割です。
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