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義肢装具士の役割は、医師の指示の下で義肢装具を作り、患者に適合させることです。
一般的に「義肢」とは義手や義足を、「装具」とは患部を固定したり保護したりする補助道具(コルセット、ギブス)などを指します。
また義肢装具士は、義肢装具を製作するだけでなく、リハビリを担当する理学療法士や作業療法士と連携して患者さんのスムーズな社会復帰をサポートすることが求められます。そのため、現場では義肢装具を作る技術と医学・リハビリ学に関する知識だけでなく、患者さんの不安やストレスを取り除くための心のケアも重要になります。
義手や義足は人間の体に合わせるものなので、患者さんにぴったり馴染むよう仕上げなければいけません。患者さんが「これでいい」と納得するまで、調整とテストを繰り返しながら完成を目指します。
また、義肢を用いた選手が出場するスポーツの大会に「メカニック」として帯同し、義肢のメンテナンスや選手のケアを担当する仕事をする人もいます。
義肢装具士は医師から患者の病状などを聞き、処方にしたがって義肢装具を作ります。
何より大事なのは、使用する患者さん本人の希望や想いに耳を傾けることです。
身体の一部を失ったばかりの患者さんの中には将来への不安などから意気消沈し、心を閉ざしてしまっている人も少なくありません。そのため、患者さんが義肢装具の製作・装着を通して希望をもてるよう働きかけるのも、義肢装具士の重要な役割と考えられています。
義肢装具の製作は、「採寸・採型 → 組み立て → 仮合わせ → 仕上げ → 最終適合」という工程で進められます。義肢に最も重要なのは、切断された部分に違和感なくフィットし日常生活に不快感が生じないことですが、同時に耐久性も考慮します。
採寸・採型、仮合わせ、最終適合など患者さんの身体に触れる工程は国家資格をもつ義肢装具士にしか行えませんが、組み立てや仕上げについては、資格をもたない製作専門の技術者が担当することもあります。義肢装具士と製作技術者の業務分担は、近年、増加傾向にあります。
義肢には大きく分けてリハビリ用と日常生活用の2種類があります。入院中、病院でのリハビリを目的として製作する義手・義足を「訓練用義足(義手)」または「仮義足(義手)」と呼びます。一方、退院後それぞれの日常生活に合わせて新しく製作する義肢装具を「本義足(義手)」と呼びます。義肢装具士は医師の指示の下、下記の流れでいずれもの製作を担当します。
患者さんのカウンセリング
病院へ出向き、医師から患者さんの情報共有を受けたあと、患者さんに対面して製作する義肢装具の相談をします。
初めて義肢装具を装着することになる患者さんは、義肢装具とはどんなものかを知らないことがほとんどです。
義肢装具士は義肢装具そのものの説明はもちろん、装着することで可能になることについても患者さんに話します。気もちが不安定であったり、義肢装具をつけることを嫌がったりする患者さんも多いため、相手の心の機微を伺いながら、ゆっくりと話を進めることが大切です。
またこの際、「とにかく楽に歩きたい」「スポーツがしたい」など患者さんが叶えたいことをどこまで具体的にヒアリングできるかも、患者さんが満足する義肢装具を製作するうえで非常に重要になります。
義肢装具の製作(採寸・採型・組み立て)
義肢装具の製作は、装着部分の「採寸」から始まります。人間の身体は人によって造形が異なるため、ここでいかに正確な採寸ができるかが義肢装具の仕上がりに大きく影響を与えます。
装着部分の長さや幅、奥行きなどを細かく採寸したら、「採型」へ移ります。採型とは、石膏を含ませたギプス包帯を用いて装着部分(患部)の型をとることです。
この患部を模した模型を削り出し、ソケットと呼ばれるパーツ(切断部を入れる部分)を製作します。
義足の場合は、その下にパイプ、膝継手(ひざつぎて:膝から上を切断した人の股関節部分を担うパーツ)、地面との接点になる足部などを付ける「組み立て」を行います。
仮合わせ
患者さんにソケットや組み立てた義肢装具を装着してもらい、身体に合うかどうかのテストをします。
動きにくい部分や、身体に直接当たる部分、痛みが生じる箇所を探し、細かく調整をしていきます。わずか数ミリの違いがフィット感を大きく左右することになるため、患者さんが納得できるまで微調整を繰り返します。
最終適合
仮合わせが終わったら、見た目の良さも考えながら、義肢装具の形を整えて仕上げます。
できあがったら患者さんに再度装着してもらい、状態の最終確認をして、問題がなければ納品となります。リハビリ用でない義肢装具の場合は、採寸から納品まで1~2カ月ほどかかるそうです。
アフターケア
患者に納品した後も、義肢装具士と患者さんの関係は続きます。リハビリ中の患者さんには、痛みや不具合、重さを感じないかなどの確認を行いながらリハビリとその後の社会復帰をサポートします。
また義肢装具は消耗品なうえ、体型や生活の変化によって体に合わなくなってくるものなので、サイズ変更や作り直し、部品の交換など、メンテナンスも行います。
取材協力/公益財団法人 鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター
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