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今でこそ世界各国に薬剤師という職業がありますが、かつては医師がその役割を担っていました。日本でも、20年ほど前までは医師が薬剤を調剤するケースは珍しくありませんでした。役割が分かれ、薬剤師が誕生した歴史を紹介します。※文章の一部を変更しました(2018年10月10日)。
薬剤師の始まりは13世紀まで遡る
一説によると、薬剤師制度は、1240年ごろに神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世が、主治医の処方した薬による暗殺を恐れて別の者にチェックさせたことが起源だといわれています。のちに彼が定めた「5か条の法律(薬剤師大憲章)」では、医師が薬局をもつことを禁じ、薬の処方と調剤の業務を分離して医師と薬剤師がそれぞれを分担するよう書かれていました。これが世界における「医薬分業」制度の始まりです。
日本における薬剤師の歴史
日本に医薬分業制度が導入されたのは、それから600年以上も後の明治時代初期のことでした。それまでオランダ医学を軸にした医療を行ってきた日本政府は、より進んだ先進医療制度を取り入れようと、ドイツから2人の医師を招きました。当時の日本の医師が診療、調剤、処方のすべてを担っている様子を見た二人は、政府に対して、
「医療は医師単独で行われるものではなく、医師と薬剤師の双方によって成り立つもの。早急に薬剤教育を施するべきだ」
と進言しました。
こうして、日本では「医制」「薬律」を制定し、医師と薬剤師を専門職として切り離すことにしましたが、当時診察料よりも調剤料で生計を立てていた医師たちは猛反発しました。こうした背景から、医薬分業制度はなかなか浸透しませんでしたが、1997年に状況が変わります。当時の厚生省が全国37のモデル国立病院に完全分業(院外処方箋受取率70%以上)を指示したことをきっかけに、各地で取り組みが急速に進み、2015年には全国の医薬分業率がようやく70%を超えました。
それまで薬剤師は主に処方箋に応じた調剤を行っていましたが、完全分業が進むにつれて調剤のほかに患者さんへの服薬指導なども行うようになりました。医師とは異なる立場で、専門的なアドバイスができるようになったのです。
薬剤師のあり方
医師は病気や症状の原因、それに対する効果的な治療法を熟知しているので、薬の知識をもっています。例えば複数の病気や症状をもつ患者に、それぞれ効果的な薬を処方することはできます。
しかし、それらが互いに反応し合って患者の身体に及ぼす影響を想定できるのは、薬の専門家である薬剤師です。薬の効果や投与量のチェックをし、これまでその人が処方されてきた薬の記録をもとにした健康面の確認など、患者の安全を守っているのです。
医療そのもののや歳を重ねてライフスタイルが変化するごとに、薬を服用するシーンや薬そのものの種類は変わってきます。効果や飲み合わせはもちろん、生活環境や体質によって、薬が身体に与える影響は人それぞれ異なるはずです。医薬分業制度が進み、医師と薬剤師双方の専門家の目を通すことで、患者さんは今まで以上に安心して健康的な暮らしを送ることができるようになるのです。
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