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臨床心理士の楽しいことと大変なこと

臨床心理士の楽しいことと大変なこと

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さまざまなクライアントと出会い、カウンセリングをする臨床心理士。相手によって対応は千差万別です。仕事を進めていくうえで、楽しいことやうれしいこと、また、大変なことや気をつけることがあるとしたら、それはどのようなことでしょうか。ある臨床心理士に聞きました。

臨床心理士はひそかによろこぶ

ある臨床心理士はクライアントが自分の到達する場所、望むところに行けるのを見守ることが楽しいと言います。カウンセリング前にどういうところへ行きたいかを聞いて、それが実現すると楽しいだけでなく、自分は役に立ったとひそかによろこぶのだそうです。
なぜひそかによろこぶのかというと、クライアント本人は臨床心理士とカウンセリングをしても『治療』という意識をまったくもっていません。自分でよくなった、治ったと思っているので、ありがとうという言葉は特に言われないのです。
どこかへ行くときに地図を見て歩き、無事に目的地に到着した場合、地図に「ありがとうございました」とお礼を言う人がいるでしょうか。それと同じで、クライアントは自分で目的とするところへ到達したと思うため、お礼を言われることはないのです。
 学校の先生や病院の先生は「先生のおかげで」と感謝されますが、それを臨床心理士に期待してはいけません。自分はきちんと仕事をしたなぁと自己満足する世界で、「うふふ」とひそかによろこぶのが臨床心理士らしい楽しみ方だと話してくれました。

体調管理と個人情報に気をつけること

いろいろな人がカウンセリングにやってきますが、すべての人が問題を解決できるわけではなく、途中で顔を見せなくなってしまう人もいます。後追いはしないので来ない理由はわかりませんが、カウンセリングのドロップアウトはとても残念なことで、寂しく思うそうです。
スクールカウンセラーとしても、病院のカウンセリングルームでも、臨床心理士は一人しかいないため、カウンセリングの予約が入っている場合は体調不良でも休めません。ある臨床心理士は以前、アレルギー症状が出たために薬を飲んだところ、強い眠気を催してしまい、かなりつらい思いをしたと話してくれました。体調管理はとても大切です。
また、まだ臨床心理士になりたてのころ、ある女性に自分と高校が同じだと話したことがあったそうです。同郷だったのでつい親近感から口にしてしまったのですが、気づくと自宅の周りをウロウロされるようになりました。どうやら、どこかで古い高校の名簿を入手して住所を調べたようです。いわゆるストーカーに遭ってしまったわけです。
これは個人情報をさらしてしまった明らかな失敗例ですが、クライアントのなかには、人との距離感がわからない人や、カウンセリングがなくてもずっと近くで寄り添ってくれると思い込んでいる人がいるのも事実です。今の世の中はSNSが当たり前の世界。対応のしかたによっては予測のつかない事態を引き起こす可能性もあるので、個人情報の管理には十分な注意が必要です。

取材協力先 松田 正子

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