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航海士の20年後、30年後はどうなる?

航海士の20年後、30年後はどうなる?

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近年発達するAIは航海士の仕事や働き方に大きな影響を及ぼしています。AIやIoTの技術開発や普及により、さまざまな研究が進められ、実用化を目指しているものもあります。自然と共存しながら船舶をオペレーションしていく航海士にとって、20年後、30年後はどうなっていくのかを解説しましょう。

自動運航船の研究・開発が進んでいる

近年の海上ブロードバンド通信の発展や IoT・AI 技術などの急速な進歩という技術革新を受けて、現在、産官学が連携して自動運航船の研究が進められています。近い将来の実用化を目指していて、船橋での見張りをゼロにする、つまり人を置かないという話も出ていますが、やはり何かあった場合を想定して一人は置くべきだと言われています。
自動運航船は技術の開発実用化などに伴って、フェーズ1からフェーズ3まで段階的に発展させる計画です。
まず、フェーズ1はIoT 技術活用船です。これまでの海上という閉ざされた環境から、ネットワークを通じて陸上からデータ分析に基づく最適な航路の提案や異常データの検知に基づく判断支援などを受けることができるようになるので、航海士の職場環境はさらなる改善が見込まれます。
次のフェーズ2では、陸上からの操船や高度な AI 等による行動提案で航海士をサポートする船舶を目指します。
さらに、フェーズ3では、自律性が高く最終意思決定者が航海士ではない領域が存在する船舶を目指しています。
ただ、船の運航は自然環境にかなり左右されます。今日は晴れていても「明日はこの低気圧がここまで近づくから、この風が吹いて、波はこのくらいになるだろう」などという予想ができることが航海士には求められます。天気予想プログラムも高度化していて、現在は、インターネットなどですぐに予報が出ますが、船の上ではネットが使えません。ファクシミリなどで送ってもらった天気図を見て、一週間後の予想気圧や周囲の雲のでき方を自分たちの目でチェックして予想することになるため、完全な無人化や自動運航はまだまだ難しいかもしれないと、ある航海士は話していました。

仕事や働き方は大きく変わっている

航海士を取り巻く職場環境は大きく改善されています。
特に、航海計器は劇的な進化を遂げていて、衛星航法装置(GPS)、電子海図、自動船舶識別装置(AIS)などはすでに広く普及しています。
例えば、電子海図です。従来は紙だった海図を電子画面で見ることができて、カーナビのようにタッチパネルで動かすので、浅瀬など危ないところがあったら簡単に見つけてチェックができます。船のコースラインの修正も簡単にできるようになっています。昔は、紙の海図に三角定規を使ってラインを引いていましたが、電子海図になってからはそのような道具も必要なくラインが引けるようになりました。
また、AISは船の名前やどういう種類の船か、どの港から出てきてどの港に向かっているのかなど、運航に必要な情報が他の船が見られるようにしていますが、電子海図上でもそのような船のプロフィールが表示されるのでとても便利です。光り方の違いによる灯台の見分け方という情報も提供してくれます。
昔はこのような機器はなくとも運航していたので、基本がわかっていれば、進化していく機械の扱い方がわからなくても問題はないかもしれませんが、やはり今後は新しい技術を習得する必要があります。これからは電子海図の資格など、新しい機械設備を使いこなすことが課題となっていくでしょう。
これまで、陸上社会や家庭から離れて働くことの多かった航海士ですが、船という限られた生活空間ではさらに高度で快適かつ安全性に優れた環境において船舶のオペレーションをおこなうことになります。
また、ロジスティクスの一翼を担う海運においては、航海士の知識と経験は大切な資源です。航海士の志望者は現在あまり多くありませんが、貴重な人材としてさらなる活躍が期待されます。

取材協力

我妻 三耶子

東京都出身。小さい頃から海が好きで、スキューバダイビングや釣りなどをしてきた。 宇宙飛行士を一時期目指したが、宇宙を知る前に地球を知ろうと思い、地球=海という発想から、東京海洋大学へ入学。大学3年生の時、1ヶ月の船舶実習を履修し、初めて船の世界を知り、航海士を目指す。 海技教育機構(旧航海訓練所)に就職し、練習船士官として働いている。

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