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家具の制作を手がける家具職人は、どのような部分に仕事の楽しさやよろこび、大変さを感じているのでしょうか。モノづくりに携わる家具職人ならではのだいご味や、完成させたときのよろこび、淡々と作業を続けるなかでの迷いや苦しみ、体力的なきつさなど、さまざまな点から見ていきましょう。
モノづくりのだいご味や感動がダイレクトに実感できる
設計図にそって木材から部材を切り出し、ホゾ(木材を接合するための突起)や穴の加工を行い、部材一つひとつにカンナやヤスリをかけ、組み立てて塗装を施す。こうして大きな木の塊が、自分の手でイスやテーブルに変わっていく……。そんなモノづくりの手応えをダイレクトに実感できるのが、家具職人の一番のだいご味といえるでしょう。
ある家具職人は「カーブした木と木がスムーズにつながったり、複雑なパーツが思い通りにカチッとはまったり、難しい作業がうまくいったときの手応えは格別。最後に塗装をして、美しい光沢とともに木目がイメージ通りに浮かび上がると、一気にワクワクしてくる」といいます。
もちろん、モノづくりの楽しさだけでなく、完成させたときの達成感やよろこびも大きいでしょう。心を込めて制作した家具がお客さまの家におさまり、愛着をもって長年使ってもらえるのは、家具職人として大きなやりがいにもつながります。また、この職人は「完成した家具を部屋に置いた瞬間、空間が家具を迎え入れ、家具も存在感を放ちつつ、より魅力的な空間がつくり出されていく……。そんな光景を目にしたときの満足感と感動はひとしお」と話します。こうして、家具と空間が織りなす世界を体感することで、クリエイティブな創作意欲が刺激されるという職人も多いようです。
精神的・肉体的にきついと感じることも
日々、木と一対一で向き合い、黙々と作業をこなす家具職人の仕事は、確かに単調で孤独な部分もあります。
とくに独立したばかりの家具職人は、自分の家具づくりを模索しながら、毎日単調な作業を一人でくり返すことに、不安を感じることも多いようです。例えば、作業をしながら「この部分はやり直すべきか、このまま進めるか」と迷ったり、自分のこだわりをどこまで追求すべきか、その見極めに悩んで悶々(もんもん)としたり。
もちろん、その答えは誰も教えてくれません。つらくても日々の作業を地道にくり返し、多くの家具を手がけて経験を積むしか方法はないのです。モノづくりを究めるために、悩みや迷いがあるのは当たり前。それは、次のステップへ進むための試練でもあるのです。
また、重い木材を扱う家具職人は、体力的にきつい部分もあります。何十キロという木材を運ぶには、それ相当の腕力が必要ですし、かがんで作業することも多いので、足腰にも負担がかかります。一方で、細かく根気のいる精密作業も多く、慣れるまでは気力・体力ともにしんどいと感じるかもしれません。とはいえ、仕事をしているうちに腕力も鍛えられますし、コツを覚えれば大変だった作業もラクにこなせるようになるものです。
このように、家具職人の仕事には精神的・肉体的に大変な部分もあります。それでも、モノづくりの楽しさや達成感、完成したときの大きなよろこびがあるからこそ、苦しさを乗り越えて続けられるのです。
伊藤 洋平
1996年より英国にて家具のデザインと制作を学ぶ。帰国後、2004年に伊藤家具デザイン設立しオリジナル・注文家具のデザインと制作を始める。2010年より本格的な家具デザインと制作技術を学べる「八王子現代家具工芸学校」を開校。ものつくり大学・日本工学院八王子専門学校非常勤講師、八王子市観光PR特使。
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