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航海士として実際に乗船する場合、最初の1年間はどのように過ごすのでしょうか。実習生(学生)として乗船していたときとは違い、安全運航を任される立場として操船技術を磨いていき、1年後は独り立ちしなければなりません。学ぶことが多い1年目の過ごし方について、説明しましょう。
学ぶことだらけの1年目
実習生として乗船していた時とは違い、航海士となった1年目は船の安全運航を任される立場になります。1年目はさまざまな経験を積む時期です。
まずは、操船技術を磨くために、上司について技術を習得します。基本は一等航海士が面倒を見ます。船によっても違いますが、二人から三人の三等航海士に対して一等航海士が一人つきます。初めは先輩と一緒に当直に入りますが、早い人は半年で、通常は1年で独り立ちすることになります。
自分の当直以外の時間でもいろいろな所に出向いて、先輩が何をしているのかをよく見ることが必要です。独り立ちすると責任重大です。事故が起きてからでは困るので、船のことをよく知っておかなければなりません。船舶間のさまざまな場面における判断力や航海計器の正確な取り扱いなど、事故を起こすことなく船を動かすことを学びます。
船は海の上で動いているので、陸上とは状況が違います。何か不具合があったらすぐに業者が駆けつけてくれるような環境ではないため、機械が壊れた場合は船の中で修理などの処理をしなければなりません。そのため自分の担当機器の性能を知り、整備方法を習得し確実に運用することが求められます。
船内生活に必要な機械を運用することも仕事の一つです。1年目の航海士が担当する機械は、主に航海計器や衛生関係機器です。修理をする機械はいろいろありますが、例えば、トイレ用の水が入ってくるタンクの場合、汚物の入った水を層に通して何度も微生物で分解して海に流すため、タンクのフィルターを掃除したり、微生物が死なないように餌を定期的に入れたり、モーターを機関士と一緒に修理をしたりします。配管が詰まった場合も航海士が対応します。
水は限られているので大切に使わなければなりません。長い航海に出るときは港に入れば水は積めますが、港から港まで一か月以上ある場合など、練習船ではお風呂の水も海水を貯めて使います。
その他、法律で決められている救命関係備品の管理など、1年目で非常に重要な役割を担います。
学ぶことだらけの1年目です。
1年目を経験して
ある航海士が初めて航海した時は必死だったそうですが、とにかく海の上にいるのが楽しく、さまざまなことを教えてもらい、発見がたくさんあったと話します。これまでの航海で一番印象に残っているそうです。
この航海士は教官として教える仕事をしていますが、実習生もあまり歳が離れていないので、一緒に話をしたり休憩時間のときに悩みを聞いたりと、実習生とのかかわりが密接で、すごく楽しかったそうです。卒業して数年経った今でも連絡をくれる実習生がたくさんいると話してくれました。
また、何よりうれしかったのは、操船するのに自分がオーダーを出すと、船が実際に動いていくのには「痺れた」と話します。オーダーを出した時は緊張したそうですが、自分の一声で大きな船が動くのは感動で、とても興奮したとともに責任を感じたということでした。
我妻 三耶子
東京都出身。小さい頃から海が好きで、スキューバダイビングや釣りなどをしてきた。 宇宙飛行士を一時期目指したが、宇宙を知る前に地球を知ろうと思い、地球=海という発想から、東京海洋大学へ入学。大学3年生の時、1ヶ月の船舶実習を履修し、初めて船の世界を知り、航海士を目指す。 海技教育機構(旧航海訓練所)に就職し、練習船士官として働いている。
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