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航海士が歩む代表的なキャリアステップにはどのようなものがあるでしょうか。船の世界では階級が明確に分けられていて、その階級ごとに仕事内容や居室も区別されています。学校を卒業後、免許を取得し、就職後は経験を重ねて昇進していく航海士のキャリアステップについて見ていきましょう。
段階を踏んでキャリアアップしていく
船の世界は大きく分けて国内輸送に従事する「内航船」と海外輸送に従事する「外航船」に分けられます。内航船であれば学校を卒業すると同時に四級海技士免許を取得し、航海士または甲板員として就職します。
外航船の場合は、学校を卒業と同時に三級海技士免許を取得し、三等航海士として就職するのが一般的です。
船におけるさまざまな経験を積んで上級免状を取得しながら、三等航海士から二等航海士、一等航海士と昇進を重ね、早いと30代、おおむね40代で船長となります。この世界は階級が明確に分けられていて、その階級ごとに仕事内容や居室も区別されています。
昇給していく過程においては、航海士という海上職だけでなく経験と知識を活かした陸上職も挟むことになります。海上で仕事を始めてから、早い人では5年目ぐらいで陸に上がり、2年間は陸で仕事をして、また5年は船に乗るというサイクルです。体調の問題などがあるわけではなく、陸上でも船を知っている人が必要とされるからです。
船長になって経験を積んだ後は、その知見を活かして管理職になることもあります。定年退職後も、国家資格を取得すれば水先案内人になる道も開けます。
水先(案内)人とは
水先案内人(みずさきあんないにん)は、港を訪れる船を安全かつ迅速に導く海の案内人で、港や水域の事情に精通したプロフェッショナルです。英語ではパイロットと言われる国家資格で、正式名称は水先人ですが、水先案内人とも呼ばれます。外国から来た大型船などが初めて港に入ってきたときに、どのように走らせてどのように入港すればよいか分からないため、サポートする役目をもっています。
例えば、大型船が入港する場合は、港の沖に停泊して水先案内人を要請します。要請を受けた水先案内人は小さいボートに乗って大型船までいき、大型船に乗りこんで操船して、船を安全に港につけるのです。
水先案内人は全国の港ごとで活躍しています。外航船が多く出入りする港や湾などの水域に水先区(みずさきく)が設定されていて、大小あわせて35の水先区があるうち、船舶が混雑したり、地形や水路が複雑だったり、気象や潮流が厳しい水域には水先法により水先案内人の乗船が義務付けられています。これを強制水先区といい、11か所が設定されています。
例えば、佐世保は湾がすごく入り組んでいて米軍の関係もあるので強制水先区に指定されていて、水先案内人を絶対に乗せなければなりません。関門海峡も同様に強制の水先区となっています。
昔は大型船の船長などを経験した人が水先案内人になることが多くありましたが、最近は学校を卒業してすぐに水先案内人になる人もいます。一定の港だけ担当するため何日も船に乗る必要がなく、家に帰ることができるので目指す人が多いようです。
三級水先案内人として就業して一級水先案内人になるまでには、少なくとも15年は必要です。水先案内人は65歳以上でも仕事ができるため、健康上の支障がなければ72歳ぐらいまで勤める人もいるようです。
我妻 三耶子
東京都出身。小さい頃から海が好きで、スキューバダイビングや釣りなどをしてきた。 宇宙飛行士を一時期目指したが、宇宙を知る前に地球を知ろうと思い、地球=海という発想から、東京海洋大学へ入学。大学3年生の時、1ヶ月の船舶実習を履修し、初めて船の世界を知り、航海士を目指す。 海技教育機構(旧航海訓練所)に就職し、練習船士官として働いている。
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