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数字と睨めっこをする印象が強い税理士は、「オフィスでのデスクワークが中心なのでは?」と考える人も多いことでしょう。しかし実際の税理士は、外に出ることがとても多い仕事です。
今回は、自身が開業した税理士事務所で「経営者」兼「プレイヤー」として働く税理士のある1日を追いかけてみました。
「経営者」兼「プレイヤー」として働く税理士のある1日
6:30/起床、身支度
経営者をはじめさまざまな人との出会いがある税理士は、身だしなみも大切。
仕事着に着替えたら、頭からつま先まで、乱れがないかをしっかりチェックします。
7:00/朝食、新聞チェック
情報収集のため、日経などの新聞二誌とネットニュースに目を通します。
税法の改正があれば税務処理の仕方も変わるように、税理士の仕事は世の中の動きと大きく連動するため、最新の動向を知っておくことはとても重要です。
また、経営者と話をする際には業界の動向を踏まえて意見交換をすることが多いので、業界ごとの注目すべきトピックが無いかもチェックします。
8:30/出社、メールチェック
自宅から電車を使って15分ほどの場所にある事務所に到着。
パソコンに向かってメールをチェックし、必要な返信作業も一気に済ませます。
9:00/アポイント先に出かける準備をする
今日のスケジュールを確認。訪問先に持参する書類がすべて揃っているかを確認し、荷造りします。
9:30/移動
1件目のアポイント先へ移動を開始します。
10:30/顧問先の社長との面談
会社を設立したばかりの若手社長との月に1回の定期面談です。
目下の経営課題は、まずは安定した売上と利益を確保することです。
これから展開する予定の新規事業について意見を求められたので、採算性の観点でアドバイスをしました。また、社内で記入してもらっている会計帳簿に不備はないかどうかのチェックも併せて行います。
担当する顧問先は合計100社ほどありますが、月に1回の頻度で会うのは10社程度。残りの90社は受け取っている顧問料に合わせて、数か月に1回、決算に合わせた年1回、もしくは電話やメールでのみの対応をしています。
12:00/昼食
2件目のアポイントの前にしばしの休憩です。
外出中も顧問先の社長から問い合わせや相談の電話が入ったり、事務所のサポートスタッフから業務に関する問い合わせのメールが入ったりすることがあるので、常に携帯はチェック。緊急性の高いものから都度対応をします。
13:00/社外取締役をしている企業の役員会に出席
社外取締役として籍を置く企業の定例役員会議に出席します。
新たな工場の建設&用地取得にかかる費用の妥当性や節税対策、来期の役員報酬をいくらにするかなどの議題に対し、現在の経営状況・資産状況を踏まえて、税務のスペシャリストとして意見を出しました。
15:00/顧問先の飲食店の店舗を視察
オーナーや経営者に経営アドバイスをおこなうためには、「ビジネスの現場」を見ておくことが重要になります。今日は、顧問先が新たに3店舗目としてオープンしたカフェを訪れ、お店の雰囲気、客層、従業員の働きぶりをチェックしたり、店長に話を聞いたりしました。アポの合間を縫って店舗視察をするのも、コンサルタント的な役割を期待される顧問税理士の重要な仕事です。
16:00/帰社
本日のアポイントをすべて終えて、事務所に帰ってきました。
デスクに座ると早速、記帳代行業務に伴う仕訳(※)を担当しているサポートスタッフから、ある取引をどう処理したらいいのかという質問が上がったので、回答をしました。
※仕訳とは、会社内で発生した金銭的な取引を勘定科目であらわして一つひとつ記録することを指します。勘定科目は資産・負債・純資産・収益・費用の大きく5つのカテゴリーに分けることができ、それぞれのカテゴリー内でさらに細分化されるため、「この取引はどの勘定科目に分類すればいいのだろう?」と悩むこともしばしばです。この仕訳情報を元に、年に1回決算書が作成されます。
16:15/翌日アポイント先に持参する書類のチェック
明日、定期面談でお伺いするアポイント先に持参する書類をチェックします。
月ごとの経営状態や資産状況をデータと共にまとめた書類をお渡し、口頭で補足説明&提案を行うことになるので、データを分析しつつ、どのように話を進めるのかを頭の中で組み立てます。データ入力はサポートスタッフが行っているので、数字などに不備がないかも確認します。
17:00/新規顧客の情報リサーチ&インプット
明日、新規顧客(会社経営者)に会うための準備をします。
初めて経営者に会う前には、会社のホームページや経営者のインタビュー記事などに目を通し、どんな事業をしているのか、経営者はどんな人柄でどんな理念をもっているのか、どんな経営課題がありそうなのかなどをインプットします。
明日訪問する会社の場合は、売上と費用のバランスが悪く利益が出ないということなので、決算書を読み込み、経営状況・資産状況もチェック。どの点を改善したらいいのかアドバイスできるようにします。
18:00/事務所スタッフの採用面接
新しくサポートスタッフを1名雇うことになったので、応募者への採用面接を行います。このような人事の業務をこなすことも、中小規模の事務所経営者の重要な役割です。
18:30/退社
家族との時間も大切にできるよう、基本的には18:30には業務を終えられるようスケジュールを組んでいます。同じ理由から、よっぽどのことが無い限り、自宅に仕事も持ち帰りません。
19:00/帰宅
19:30/夕食
子どもと一緒に食卓を囲みながら、今日あった出来事の話をします。
平日子どもとゆっくり向き合えるのは夕食の時間だけになるので、貴重なコミュニケーションのひと時です。
20:30~22:30/自由時間
毎日さまざまなところに出かけ、多くの人と出会うことが仕事の税理士は体が資本。急な体調不良で約束に穴を空けないよう、体を休める時間と自己メンテナンスは欠かせません。夕食から引き続き家族とおしゃべりをして過ごしたり、一緒にテレビを見たり、本を読んだり、軽い運動や半身浴をしたりと、自分にとって効果のあるリフレッシュ方法で1日の疲れを癒します。
23:00/就寝
頭の中で明日の動きをシミュレーションしつつ、就寝します。
条件が違えば、働き方や担当する仕事の中身は変わる
学生のうちは接点もないので、どんなことをしているのか見えづらい税理士の1日ですが、少しはイメージがふくらんだでしょうか?
今回は経営者でもあるベテラン税理士を例にしていますが、サポートスタッフを雇わず一人で仕事をしていたり、事務所に雇用されている立場であったり、税理士としての経験年数がもっと少なかったりと、条件が違えば働き方や担当する仕事の中身は変わってきます。
学生時代に税理士事務所や会計事務所でアルバイトをすることも、税理士のさまざまな仕事を理解する上で大きく役立ちますので、チャンスがあればぜひチャレンジしてみてください。
髙橋昌也※2020年9月8日更新
税理士。東京地方税理士会川崎北支部所属。2007年に税理士登録。「小さなおしごとの支援」を掲げ、小規模事業者に特化して業務を展開。各種事業計画の策定や金融機関との交渉など、経営に関する幅広い分野について支援を実施。2013年には経営革新等支援機関の認定取得。税理士業務で学んだ知識や経験を生かし、文化・芸術活動の支援にも携わる。
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